2005-01-01から1年間の記事一覧

エドモンド・ハミルトン「フェッセンデンの宇宙」

河出書房「奇想コレクション」のシリーズの一つ。「宇宙」を作り出してしまった科学者が狂気の実験に明け暮れる表題作をはじめ、「早すぎた埋葬」を極めて切なくアレンジした「帰ってきた男」、惑星探検の惨事を胸に秘めたまま地球で大歓迎されてしまう男を…

エドモンド・ハミルトン「反対進化」

いかにもB級なSF・ファンタジー小説作家の、SF短編集。人類が実は他の惑星からやってきた知性体のもっとも退化した姿であったことがあきらかになる表題作「反対進化」、マッドなサイエンティストたちによってアンタレス星に送り込まれた若者が王様とし…

エドモンド・ハミルトン「眠れる人の島」

キャプテン・フューチャーなどのいわゆる「スペースオペラ」と呼ばれる類のSF小説群で有名な著者の、「幻想小説」や「冒険小説」に分類されうる小説を集めた短編集。古代の蛇の女神が蘇りをはかるクトゥルーっぽい小説から、夢見たものが実現してしまう孤…

リリー・フランキー「美女と野球」

やけくそアップ大会第五弾。リリー・フランキー様が各所でかかれた雑文と駄文を集めたもの。全編にわたりくだらないものとどうでも良いことに対する愛が大声で歌われる。 最高。表紙も良いが内容も良い。とにかく話題がくだらない。中華料理屋に行って便所に…

田口ランディ「コンセント」

それゆけ年末棚卸しアップ第四弾。社会に適応できなかった兄が自宅で自然死していたことに衝撃をうけた妹が、転移関係になってしまい関係が破綻した昔の教師に再びカウンセリングをうけ、そんでどう考えても状況が悪化して、公園で全裸で叫んだりして、沖縄…

夢枕獏「陰陽師 龍笛ノ巻」

それいけ連続アップ第三弾。最近さすがにお金が無くて、そんなに単行本を購入できないのです。というわけで目を皿のようにして文庫本でめぼしいものを探していたら、以前良く読んでいた夢枕獏氏の陰陽師のまだ読んでいないと思われる巻が。これははずれはあ…

太田忠司「予告探偵 西郷家の謎」

発作的アップ第二弾。最近肩の凝らない推理小説でも読みたいのだが、どうにも新刊に元気がない。ちっともつまらない。と思っていたら、何となくジュブナイル作家だとおもっていた太田忠司氏が推理小説を書いているではないか。この人は、対象年齢が多少低め…

森達也「悪役レスラーは笑う ー「卑劣なジャップ」グレート東郷ー

最近本は読むのだが、いかんせんアップする時間が無い。今日はぽっかり時間が空いたので、最近の読書を続けてアップすることにする。これは第一弾。戦後すぐにアメリカで活躍し、その後日本でも力道山らとリングに登ったグレート東郷という人の生い立ちをめ…

松尾由美「いつもの道、違う角」

会社の同僚のちょっとした一言から、彼の異常な欲望がみえてしまいそうになるのかならないのかといったところの「琥珀のなかの虫」、麻疹にうなされる息子のことばにある事件の真相が語られそうになる「麻疹」、画家の秘めたる鬱屈を高校生の少女が見つめる…

草森紳一「随筆 本が崩れる」

マンションを本で埋め尽くしながら生活する筆者が、風呂場に入ったところで廊下の本が崩落、扉が開かなくなり閉じこめられながら、洗面所に積み上げてある本を黙々と読む表題作から、寝ている時に地震が起こり、布団の周囲に積み上げてくる本が崩れ落ちてく…

リリー・フランキー「東京タワー」

リリー・フランキーの母親と別居する父親と小倉と筑豊と高校時代と武蔵美の生活と癌になった母親と相変わらずヤクザな父親とハワイ旅行と母の死と東京タワーのはなし。 とてもやさしくゆるやかで水っぽく、ひねくれながらもまっすぐで、明るく楽しくやけくそ…

山田正紀「蜃気楼・13の殺人」

色々うまくいかなくなって会社を辞め、田舎町で農業をしようと引っ越してきた父母息子祖父の四人家族が、村おこしのマラソン大会で13人のランナーが消え失せるという事件に巻き込まれる。この事件を皮切りに放火や殺人事件が相次いで起こり、最後には巨大…

荒山徹「十兵衛両断」

柳生十兵衛が朝鮮人の妖術により虚弱妖術師と身体を交換されてしまい、その奪われた身体を取り返すために鬱々と修行を続ける表題作の「十兵衛両断」を始め、徳川幕府勃興期における柳生家の人々の姿を、豊臣秀吉の朝鮮侵略の恨みから執拗に徳川家や秀吉に復…

森達也「職業欄はエスパー」

ドキュメンタリー作家である著者が、3人の「超能力者」の日常に焦点を当てたドキュメンタリーを作成するため、取材をし、ディレクターと交渉し、企画が没になり、オウム事件が起こり、超能力者の一人が離婚して再婚し、再びディレクターと交渉して企画が通…

永嶋恵美「一週間のしごと」

幼なじみの高校生の女性が、渋谷に遊びに行ったと思ったら迷子を連れて帰ってしまう。その迷子の母親と思われる女性は集団自殺してしまい、仕方なく親戚を探すうちに凶悪犯罪に巻き込まれてしまうはなし。 ちょっと、コメントに困る。というか、なかなかの出…

山田正紀「マヂック・オペラ 二・二六殺人事件」

確かネットだと9月24日に出版されているはずなのに、全く書店で見かけることなく数ヶ月が過ぎ、半ばあきらめ書けていたところやっと最近書店で発見、喜び勇んで買ってみた。いったいこの遅滞は何だったのか。広告を刷ってしまってから作者が修正したくて…

伊坂幸太郎「チルドレン」

最近伊坂幸太郎氏の諸作を読み直すことが多い。ここ二つ、なんだかピンと来ない作品が立て続けに発表されたが、やっぱり面白いなあ。これは、独善的で論理性に乏しい家裁調査官をめぐる人々といくつかの事件を、時系列を揺るがしながらならべて最後にとん、…

山田正紀「人喰いの時代」

満州事変の数年後を舞台に、正体不明の主人公が、東京から樺太に向かう船上で不思議と物事の理由にこだわり、回答を探し出す男に出会う。その船上で起きた事件を皮切りに、北海道の各地を二人で転々としながら、いくつもの事件を解決してゆく。 まず、主人公…

小路幸也「高く遠く空へ歌ううた」

感情を表すことのできない少年は、次々に自殺死体をみつけてしまうという不運な体質を持つ。その少年が草野球と冒険チーム「イレギュラーズ」の仲間たちと、自殺の理由をつきとめ、そして大好きな先生の自殺を止められないはなし。 まずなんといっても、「少…

平石貴樹「笑ってジグソー、殺してパズル」

ジグソー・パズルフリークな金持ち一家で連続殺人事件が起こり、死体の周囲にはジグソー・パズルがばらまかれていた。探偵小説マニアの主治医、おかしな英語を操る家政婦、東北弁の刑事、事件の形而上学的意味にこだわる大学教授、絶叫する運転手など、おか…

山田正紀「超・博物誌」

プラズマを羽に受けて宇宙を飛ぶプラズマイマイ、異常に高密度な磁気を発生させるファントムーン、鉱石所の採掘跡に引かれたレールの上を超伝導を発生させて宇宙へ飛び立とうと疾走するカタパルトリッパーなど、なんだかよく分からない世界に存在する宇宙船…

山田正紀「吉原螢珠天神」

江戸開闢の先駆けをつとめさせられた徳川の家臣が、深川にすみつくもののけと取っ組み合う「あやかし」、秀吉の朝鮮侵略の際にキムチの味を憶え、日本でもキムチもどきを作り続け変人扱いされる武士を描いた「辛うござる」、元御庭番が井伊直弼暗殺を命じら…

柳広司「吾輩はシャーロック・ホームズである」

ロンドン留学中の漱石が錯乱、自分をシャーロック・ホームズだと思いこみ、べーカー街のホームズ邸に「帰宅」する。丁度そのときホームズは長期旅行中、ワトスンはホームズの依頼もあり、渋々奇矯な日本人の妄想におつきあい。そんな中、降霊会での殺人に漱…

伊坂幸太郎「重力ピエロ」

サラリーマンの主人公の周囲では放火と落書きが相次ぎ、主人公は落書きを消す仕事をしている弟の仕業ではないかと疑いを持つ。弟は主人公の母がレイプされて出来た子で、父親とは直接の血縁関係が無い。母はすでに無く、父親は癌で闘病中。その父は、放火と…

小沼丹「懐中時計」

友人が妻を亡くした話に呆然とするうちに自身が妻を亡くしてしまうエピソードを、勝手に居着いた猫の話の中に淡々と織り交ぜて描いた「黒と白の猫」、同じ人物を主人公として、一時期飼っていた犬が農家にもらわれていった話「タロオ」等、私小説的な日常雑…

アブラム・デイヴィッドスン「どんがらがん」

SFというかファンタジーというか、不思議で不条理感にあふれた短編を集めたもの。 いつもただならぬオーラを感じさせる作品をものし、その全てを尊敬せざるを得ない異能の作家殊能政之氏が編集し、かつ(当然だが)絶賛している本なので、とりあえず読んで…

松尾由美「ハートブレイク・レストラン」

駆け出しライターの女性が仕事場代わりに使うなんだか元気の無いファミリーレストランの片隅には、地主だった老女の幽霊が時々あらわれる指定席があり、ライターの女性の身辺に起こる様々な不思議な出来事を小耳に挟んだその老女の幽霊が、彼女にいろんなア…

J. G. バラード「沈んだ世界」

太陽の自転周期か何かの変調のため地球の気温が上昇し、北極の氷が溶け始めたために海水面が著しく上昇した世界では、今まで人間が住んでいた世界は次々と水没してゆき、人間は極を中心とした狭い範囲にしか生息できなくなる。そのような世界の中で、以前ロ…

ボブ・ラングレー「北壁の死闘」

第二次世界大戦末期を舞台として、トラウマティックな経験を持ち登山が恐怖になってしまったドイツ軍に従軍するクライマーが、ナチの思惑によって山岳部隊に引っこ抜かれ、嫌々核物理学者の誘拐に参加し、極度に登頂の難しい絶壁を二度にわたり登る羽目にな…

天野頌子「警視庁幽霊係」

幽霊が見えてしまう体質の刑事が、殺人事件の現場に居残っている幽霊たちに嫌々ながら事情聴取を行い事件を解決してゆく話。 いやいや幽霊が見えてしまう主人公、そのために胃を痛め刺激物を飲めない体質、警察以外には幽霊の存在が隠匿されている、幽霊対策…