2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

須賀敦子:塩一トンの読書

あれはいつのことだったか、確か打ち合わせを終えて先生方とお話しをしているとき、だれも建築の話をせずに映画や音楽の話で盛り上がった。その時、ぼくの上司である先生にお勧めいただいたのが須賀敦子氏で、聞いたこともなかったので目を丸くしていたら、…

閑話休題:嫌いなもの

嫌いなもの。啓発系のすべてが嫌い。ライフハックも同様。ぼくをこれ以上啓発しないでくれ。そもそも、人間はそんなに頑張らなくても、適当にだらだら生きていたほうがいいよ。みんな、啓発されずにゆっくり生きようぜ。電車の発車するときのメロディーが嫌…

伊藤計劃:ハーモニー

21世紀後半、世界で殺戮が横行した<大災禍>を経験した人類は、人々がお互いに「幸せ」であることを、法律・技術的に義務づける究極の「友愛社会」を形成する。そのなかで、自分を消滅させることを目標に集まった3人の少女は、あるものは成功し、あるも…

閑話休題:最近のわたくしの生活

1エントリ一冊のスタイルに飽きてきたので、ちょっといつもと違うことを。先週の19日は、勤めている大学の卒業式でした。赴任して1年しか経っていないので、4年生はほとんどわからないけれど、みんな嬉しそうで良かった。寂しくなるけど、お互い新たな…

ケヴィン・ウィグノール:コンラッド・ハーストの正体

ユーゴスラヴィア内戦でのトラウマティックな経験を経て、冷徹な殺し屋となった主人公の男性は、ある日突然殺し屋を辞めようと思いつく。そのため、自分を知っている四人の男性の殺害を企てるのだが、その過程で自分自身にまつわる意外な事実が明らかになる…

山田正紀:ふしぎの国の犯罪者たち

六本木のとあるバーには、名前を明かさずに「兎」「帽子屋」「眠り」と、ふしぎの国のアリスにちなんだ名前でそれぞれを呼び合う男たちが集う。普段は普通の暮らしをいとなむ彼らが、ふとしたきっかけで銀行強盗や誘拐事件などに巻き込まれ、いつのまにか人…

姜尚中、宮台真司:挑発する知 愛国とナショナリズムを問う

姜尚中氏と宮台真司氏という、ちょっと想像のつかない組み合わせの二人が、しかもナショナリズムを議論するという思いがけないようで、文庫だったこともありつい購入してしまいました。宮台氏については、ぼくはきちんと氏の著書を勉強したことがないのだけ…

米澤穂信:秋期限定栗きんとん事件 上・下

「小市民」として目立たずそつなく過ごすことを目指す高校生の小鳩くんは、それでも思わず探偵の才を発揮してしまい、高校近辺で発生した連続放火事件に関わってしまうことになる。その顛末をつづりつつ、憧れの高校生ライフや新聞部の後輩の奮闘、そして以…

森見登美彦:恋文の技術

修士論文のデータ収集のため、能登半島にあるクラゲ研究所に島流しにあった京都大学修士一年の学生が、あまりの暇さに友人や先輩と文通を始める。その、彼が書きつづった手紙を集めて一つの物語にしたてあげたもの。僕は電車の中で本を読みながら、声をあげ…

小山慶太:星はまたたき物語は始まる

伊坂幸太郎「終末のフール」や池澤夏樹「真昼のプリニウス」などの現代の小説から、夏目漱石「草枕」や芥川龍之介「龍」などの近代文学、加えて「ウォーターホース」や「A. I.」など比較的新しいアメリカ映画まで、さまざまな物語を科学の側面から読み解いた…

大山顕:高架下建築

その名の通り、高架下に設置された建物たちのファサードを、時には淡々と、時にはダイナミックに切り取りながら、その魅力をあますところなく伝えた写真集。大阪の中津の高架下にはじまり、環状線エリアや御影エリアなど、関西の素敵な高架下の建物や道路、…

荒木経惟:天才アラーキー 写真ノ方法

あの破格の写真家荒木氏が、写真と自分に対する愛をとりとめもなく、勢いよく語ったもの。おそらく酔っぱらいながらのインタビューを、対談形式ではなくモノローグの形でまとめている。なんつーか、めちゃくちゃかっこよいですよ。ことばが。とにかく勢いが…

大井玄:「痴呆老人」は何を見ているか

終末期医療に取り組む医師が、認知症高齢者やひきこもりの若者などの精神構造を、臨床的知見から読み解いたもの。この類のはなしは気になるところで、それは自分が高齢者施設を設計していたとき、例えば浴室はどのようであれば良いのか、認知症を発症した利…

ジョー・ホールドマン:ヘミングウェイごっこ

ボストンの大学で任期付きの教職に就く主人公の男性は、ある日飲み屋である一人の詐欺師によってヘミングウェイの贋作詐欺にまきこまれる。ところがヘミングウェイ研究科である主人公はどんどんのめり込んで行き、一方でけしかけた詐欺師と主人公の妻はなん…

ジャック・ルーボー:麗しのオルスタンス

おそらくパリのどこかと思われる街で、教会の専属オルガン奏者である神父の双子の娘の友人で哲学を専攻する、オルスタンスという不必要にセクシーな女性は、図書館へ向かうバスの中で不思議な青年と知り合い恋に落ちる。その謎めいた青年の秘密を目撃した高…

相対性理論:シフォン主義

ハイファイ新書があまりにもよかったのだけれど、PVでみた「LOVEずっきゅん」はあんまり趣味でないかなと思い買っていなかったアルバムです。最近新しい音楽がないなと思っていたので、本日iTunesで衝動買いしました。そしたら良かった!音程は意図的とは思…

柳広司:饗宴 ソクラテス最後の事件

最近これといって読みたい本もないので、適当に目についた本を購入して読んでみたのですが、2冊続けて途中でつまらくなって投げ出してしまいました。これはいかんとも思うし、やはりそろそろちゃんとした文章を読みたくなったので、以前読んだことはあるの…