ケヴィン・ウィグノール:コンラッド・ハーストの正体
ユーゴスラヴィア内戦でのトラウマティックな経験を経て、冷徹な殺し屋となった主人公の男性は、ある日突然殺し屋を辞めようと思いつく。そのため、自分を知っている四人の男性の殺害を企てるのだが、その過程で自分自身にまつわる意外な事実が明らかになる。
なんだか不思議なお話で、最初はまじめなサスペンスかと思いながら読んでいたのですが、すぐに物語が脱線しはじめる。まず、登場人物の誰が誰やらよくわからない。また、主人公も記憶に自信が無いようで、読んでるこっちが不安になります。
主人公に襲いかかる出来事も、よく考えれば御都合主義の不運バージョンというか、よく意味の通らないイベントが多く、それでも物語は進んで行くので追いかけるのが大変です。でも文章自体はそれほどオフビート感があるわけでもなく、淡々とまじめに書かれているのでついまじめに読んでしまう。
最終的に物語はちょっと意外というか、思ったよりまともな終わり方をしてびっくりですが、結局面白かったのかというととても面白かった。主人公がある種の変態で、しかもそれを自覚しながら淡々と人を殺して行く様の描き方は、けっこう新鮮で楽しめました。文章もリズム良く、訳文も美しいです。無意味に細かな描写も良かった。
- 作者: ケヴィンウィグノール,Kevin Wignall,松本剛史
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (14件) を見る