閑話休題:最近のわたくしの生活

1エントリ一冊のスタイルに飽きてきたので、ちょっといつもと違うことを。

先週の19日は、勤めている大学の卒業式でした。赴任して1年しか経っていないので、4年生はほとんどわからないけれど、みんな嬉しそうで良かった。寂しくなるけど、お互い新たな出会いもあるしね。業界大変だけれど、力強く泳いでいってほしい。その後のゼミの打ち上げでは、修士の卒業生に大変嬉しいものを頂いて感激。僕は君たちに、これほどまでのものをあげられたのだろうか。

明けた月曜日は、こんどは自分の出身研究室の追いコンで、打ち合わせのついでに参加、研究室で安価に飲むという、相変わらずのスタイルが懐かしい。その次の日は、今月いっぱいで退職される方の慰労会。つい4次会まで飲んでしまい、今日は心から気持ちが悪かった。

その間いろいろと本も読んだのだけれど、なにかぐっとくるものは少なかったように思います。山田正紀氏の「神君幻法帖」は、ここ最近の山田氏の洗練された文章で山田風太郎の忍法帳の世界を再現するという、面白くないわけがない物語で面白かった。でも、忍法帳独特のまったく無意味であることの美しさと、山田氏の虚無的な物語の作り方が、なにか打ち消し合ってしまうような感じがありました。

香月日輪氏の「妖怪アパートの幽雅な日常 2」は、一作目はとてもよい青春小説として読んだのだけれど、本作はちょっと妙な雰囲気。あきらかにそっち系の読者を想定しているようです。田中長徳氏の「カメラに聴け!」は、「空気感」に関することとか、重くてデカいカメラはやめといたほうが良いとか、ほーなるほど、と思わされることがいろいろ書いてありました。しかし、僕はなぜかこの方の語り口が苦手です。

門倉貴史氏の「貧困ビジネス」は、この前痛ましい火災が起きてしまった無許可特養の利用者は、ある意味で貧困ビジネスのターゲットだったとどこかで読んだ記憶があり、これは読まなくてはと思い購入。いや、気の滅入る本です。よくまあ、淡々とこういう研究ができるなあ。不幸のカタログですね。しかし、経済学者の役割って、こういうことなのかなあ。むしろ博物学的な興味を、本書からは感じてしまうのだが。

現在読書中の本は、まず斎藤潤氏の「吐噶喇列島」。屋久島から奄美大島までの間に位置する島々の、旅行記みたいなもの。素朴な筆致がとてもすがすがしい。島ごとに細かく別れているので、少しずつ読み勧めています。

次は、須賀敦子氏の「塩一トンの読書」。本に関する様々なことを、淡々とした暮らしのなかからつづった(と感じさせる)エッセイ集。とても静かな文章で、読み進めるのが惜しい。これもゆっくり読んでいます。

それから佐々木謙氏の「暴雪圏」。猛吹雪で孤立した村でおこる事件を、駐在の警察官を主人公に描くお話し。文章もテンポも素敵なのだけれど、あまりにも物語が陰鬱になってきたので、これ以上読み進められない雰囲気になってきました。

今日買ってしまったのがJ. G. バラードの「楽園への疾走」。今月一番待ち遠しかった本です。ようやく文庫になって、買うことができました。これはもう、素晴らしいことまちがいない作品なのだけれど、訳者後書きの書き出しからして凄い。
「長らくお待たせいたしましたが、バラードの最新刊「楽園への疾走」をお届けします。いつもながら、バラードらしい美しくも倒錯した破滅世界があなたを待ち受けています。」
こういう文章を書くひとのことばで翻訳が読める国に生きていて、僕は大変に幸せです。

そんなこんなで朦朧としていたら、この前投稿した論文の採用通知が。思えば研究開始から一年半が経過し、長い道のりでした。ちょっと嬉しくて、一日仕事にならなかったなあ。明日からは、次の論文のデータ作成をはじめるぞー。

神君幻法帖

神君幻法帖

妖怪アパートの幽雅な日常 2 (講談社文庫)

妖怪アパートの幽雅な日常 2 (講談社文庫)

貧困ビジネス (幻冬舎新書)

貧困ビジネス (幻冬舎新書)

吐カ喇列島 (光文社新書 365)

吐カ喇列島 (光文社新書 365)

塩一トンの読書

塩一トンの読書

暴雪圏

暴雪圏

楽園への疾走 (創元SF文庫)

楽園への疾走 (創元SF文庫)