エドモンド・ハミルトン「フェッセンデンの宇宙」



河出書房「奇想コレクション」のシリーズの一つ。「宇宙」を作り出してしまった科学者が狂気の実験に明け暮れる表題作をはじめ、「早すぎた埋葬」を極めて切なくアレンジした「帰ってきた男」、惑星探検の惨事を胸に秘めたまま地球で大歓迎されてしまう男を描いた「向こうはどんなところだい?」、水星で人類を超えた存在に遭遇してしまい失意に打ちのめされる「太陽の炎」、夢の世界と覚醒した世界の両方で別々の人生が展開する「夢見る者の世界」など、短編を集めたもの。

「眠れる人の島」、「反対進化」があまりにも良かったので、いてもたってもいられなくなり本屋へ。このシリーズは表紙はすばらしいが相性が良くないので多少躊躇したが、これを読まないとするとキャプテン・フューチャーの文庫全集に手を出さざるを得ず、そうすると一冊1200円程度を最終的には10冊も買い込むことになる予感に襲われ、恐怖にうちふるえながらこちらを手に取った。で、結論としては大正解。これも素敵な本でした。この短編集ではおそらく意図されたのだと思うが、不思議にメランコリックで叙情的な作品が選ばれていると思う。実のところ「フェッセンデンの宇宙」はそれほど名作だとは感じなかったが、「帰ってきた男」は秀逸。また「向こうはどんなところだい?」、「太陽の炎」もなんとも切ない雰囲気が見事に描かれ、すばらしい。でも「夢見る者の世界」では中世アラビア的な不思議な世界に生きる男の冒険譚が、ためらいもなく堂々と描かれていて、やはりハミルトンらしさも感じられる。とにかく、素直に読めて楽しめる。こういう作家っていいよなあ。ほんとうに文章と構成力がなければ、こんな直球勝負できないもんね。才能の輝きが文章にあふれ出ているよ。この勢いだと、キャプテン・フューチャーも買ってしまいそうだ。むむ。。。