アブラム・デイヴィッドスン「どんがらがん」



SFというかファンタジーというか、不思議で不条理感にあふれた短編を集めたもの。

いつもただならぬオーラを感じさせる作品をものし、その全てを尊敬せざるを得ない異能の作家殊能政之氏が編集し、かつ(当然だが)絶賛している本なので、とりあえず読んでみた。これは河出書房新社の「奇想コレクション」というシリーズの一環で、これ以外にも様々な、ちょっと変わった作家たちの短編集が出版されている。ぼくはこのシリーズにはなぜか相性が合わず、いつも途中で読んでやめてしまったり、読み終わっても全然楽しめないことが多い。でもこれならば、楽しめるのではないか、と思って読んだのだがやっぱり駄目だった。物語は極めてトリッキーである意味上品、語り口もとても手が込んでいるし、おそらく文章はとても練り込まれているのだと思う。でも楽しめない。ここまではずれると、どうやらぼくはこのシリーズのありかた、つまり短編を選んで収録する、同時に、様々な翻訳家が翻訳をしているという形式に、どうやら拒絶反応を起こしてしまっている気がしてならない。この本がまさに典型だけど、ちょっと変わった作風の文章を翻訳するのは、おそらく大変に難しいことなのだろう。しかも結果としてできあがった文章は、やっぱりなんだかおかしな文章であり、それは同じ「奇妙な」文章だとしても久生十蘭や石川順のような雰囲気とは、全く違うなにかになってしまう。なんだかなんだか。難しいものです。