小川一水:天冥の標 VI 宿怨 PART3

天冥の標 6 宿怨 PART3 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標 6 宿怨 PART3 (ハヤカワ文庫JA)

西暦2502年、ついに地球の侵攻を開始した<救世群>は、時を同じくして全惑星系に向けて任意の場所と時間に<冥王斑>のアウトブレイクを起こすことができると通告、実際に<救世群>に刃向かった惑星上でアウトブレイクを引き起こす。<救世群>はこのテロ攻撃を盾として次々と惑星を支配下に置いてゆくが、タック・ヴァンディの子孫であるブレイド・ヴァンディが商務大臣を務めるパナストラ政府が治める惑星パラスも、冷酷な<救世群>の代官ノルベール・シュタンドーレによって非常な扱いを受けることになる。他方、防戦を強いられるロイズ非分極社団を中心とした「人類」たちは、<救世群>の圧倒的かつ非人類的な攻撃力の前に、セレスからあのドロテア・ワットを出撃させる。ドロテアを操縦するのは、ロイズ非分極社団の重要人物であるジェズベルを母に持ち、フェイドールとジェズベルによってなんだか丸め込まれてしまったアイネイア・セアキだった。

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今野敏:初陣 隠蔽捜査3.5

初陣 隠蔽捜査3.5 (新潮文庫)

初陣 隠蔽捜査3.5 (新潮文庫)

警視庁のキャリアながらも私大卒という経歴に気後れを持つ主人公の伊丹が、同じ警視庁キャリアで東大法学部出身、なおかつ小学校の同級生だった竜崎のあくまで頑なな考え方に辟易しながらも、困ったことがあるといつも竜崎を頼ってしまい、しかもかならず助けられるエピソードを集めた短編集。伊丹が福島県警本部の刑事部長から警視庁の刑事部長に栄転するタイミングで生じた殺人事件に翻弄される「指揮」にはじまり、同じく警視庁の長官官房総務課長時代に栄転した竜崎が裏金問題に苦しむ伊丹をひねくれた手法で助ける「初陣」、醜聞のとばっちりで大森署の署長に異動させられた竜崎に休暇中の伊丹が翻弄される「休暇」など、計8編収録。

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野田昌宏 編訳:太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊 スペースオペラ名作選

太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊 (スペース・オペラ名作選) (創元SF文庫)

太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊 (スペース・オペラ名作選) (創元SF文庫)

名翻訳家にして編集者でもあった野田昌宏氏が、自らの翻訳作品で編集した「スペースオペラ名作選」。1972年にハヤカワ文庫SFより「太陽系無宿」と「お祖母ちゃんと宇宙海賊」として、2冊で出版されたアンソロジーを合冊して、新たに創元SF文庫より出版されたもの。<キャプテン・フューチャー>シリーズのスピンオフとも言えるグラッグの精神的混乱とそれとはあまり関係の無いロボットたちの反乱を描く「鉄の神経お許しを」にはじまり、危険な動物の跋扈する冥王星をそのまま月の地下にもってきて撮影された一大SF映画の顛末を描く「大作<破滅の惑星>撮影始末記」、まったくもって西部劇的な表題作「太陽系無宿」、お祖母ちゃんが宇宙海賊や治安維持部隊を手玉にとる「お祖母ちゃんと宇宙海賊」など、9編の冒険活劇を収録。

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天冥の標 VI 宿怨 PART 2

天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標6 宿怨 PART 2 (ハヤカワ文庫JA)

スカイシーでの脱走劇から3年後の西暦2502年、<救世群>議長の娘イサリとその妹ミヒルは<救世群>の権利拡大を訴えるため、国際会議に出席するべく開催地のセレスを訪れていた。そこで「外を見たい」とのミヒルの誘いを振り切れなかったイサリは、3年前のようにホテルを抜け出したものの、反政府勢力「ビーバー」に見つかり彼ら彼女らの拠点に捕らわれてしまう。「ビーバー」たちは、この国際会議に向けてテロ攻撃を計画し、その一環として彼女らを利用しようと試みたのだ。なんとか窮地を脱した彼女らだが、その後ロイズ非分極保険社団の先導する国際会議では<救世群>への監視の徹底など屈辱的な事項が次々と決議され、<救世群>たちは窮地に追い詰められることになる。しかしそのとき、<救世群>は<恋人たち>を通じ地球外生命体の<穏健な者(カルミアン)>たちと接触することによって、身体を頑強にする技術などロイズや他の国家をはるかに凌駕するテクノロジーを入手、独占していた。

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東直巳:探偵はひとりぼっち

探偵はひとりぼっち (ハヤカワ文庫 JA (681))

探偵はひとりぼっち (ハヤカワ文庫 JA (681))

いきつけのオカマバー「トムボーイズ・パーティ」につとめる「マサコちゃん」は、なぜかテレビ番組の素人マジックショーに出てみたいという夢が膨らみすぎて、一生懸命マジックを練習し、ついにその夢を叶えることになる。「トムボーイズ」のスタッフと常連は、マサコちゃんの晴れ舞台を視聴しながら応援し、ついにマサコちゃんが「準グランプリ」輝いたところで絶頂的な盛り上がりを見せる。ところがその直後、マサコちゃんは札幌の自宅前の駐車場で見るも無惨な死体となって発見されてしまう。驚愕する<ススキノ>探偵の「俺」は、当初は警察の捜査に期待するのだが、まったくもって捜査は進まず犯人は捕まらない。一時期はしかたないやと思っていたのだけれど、いつしかいてもたってもいられなくなり色々と探り出す「俺」は、「トムボーイズ」の関係者はじめマサコちゃんの関係者が、みな一様に口を閉ざし、事件の解決に進んで協力してくれない状況に気がついてしまう。その背後には、どうやら北海道出身の政治家のスキャンダルがあるらしい。みなの複雑な事情をわかりつつも、「俺」は誰も助けてくれない中で、ひとりマサコちゃんの死の真相を明らかにすべく、奮闘を始める。

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小川一水:天冥の標 VI 宿怨 PART1

天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)

西暦2499年、<救世群>の指導者の血脈に連なる13歳の少女イサリは、スカイシーに出張するという滅多にない機会に「星のリンゴ」を手に入れるべく、厳しい監視の目をかいくぐって脱出、巨大宇宙施設内に再現された自然環境を旅するがあっさり遭難してしまう。死を覚悟した彼女の前に、フェオドールなる不思議なロボットを伴った<非染者(ジャームレス)>の少年が出現、「スカウト」と呼ばれる仲間たちとともに、彼女を遭難から救出するのみならず、「星のリンゴ」を手に入れる小旅行に同伴することになる。その少年アイネイアの母ジェズベルは、ロイド非分極保険社団の所有する兵器開発会社MHDのFOOジョズベルという、<救世群>抑圧の最先鋒とも言うべき人物だった。

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東直巳:向こう端にすわった男

向う端にすわった男 (ハヤカワ文庫JA)

向う端にすわった男 (ハヤカワ文庫JA)

<ススキノ>探偵シリーズ第3作目にして初の短編集。常の居所バー<ケラー>にて、カウンターの反対の端にすわった男が「俺」の前で繰り広げる奇妙な挙動を描いた「向こう端にすわった男」、知り合いの知り合いの知り合いの娘が夢中になってしまった調子のいい奴の転落的人生を描く「調子のいい奴」、「俺」の顔なじみの客引きがヤクザに取り込まれてしまった幼なじみの女性を助けようと必死にがんばる「秋の終わり」、ホームレスの男性が別れた息子のために大胆な行動に出てしまう「自慢の息子」、詐欺師とイベント運営会社の社員と学園紛争が生み出してしまった悲劇を描く「消える男」の5編収録。

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