閑話休題:なんかあんまり

更新する気が起きなかったのは、読む本読む本陰鬱とした感じになってしまい、楽しく読書の記録をつけるきにならなかったからです。それでも読んではいたので、一応記録までに。


マイケル・シェイボンユダヤ警官同盟 上・下
アラスカ州の一部に暫定的にユダヤ国家が樹立されたパラレルワールドで生じた殺人事件を追う刑事の話。これでもかというくらいに陰鬱。しかし、全編にみなぎるユダヤ文化はとても新鮮でした。シオニズムパレスチナ国家樹立の歴史を知らないと、理解できないと思われる点多数。有名SF賞を受賞しているわりに(そのためか)、極めて文学的な冗長性に溢れ、途中で自分を見失うこと幾多、面白かったけど疲れました。しかし上下巻合わせて約1200円はお得だと思います。


チェルシー・ケイン:ビューティ・キラー2 犠牲
変態シリアルキラー(女性)に虐待されたため変態になった刑事が、連続殺人事件の犯人を追いかけるはなしの第2弾。相変わらずの主人公の壊れっぷりが引きます。次々と変わる語り手の視点、テンポ良くかつ予想をはるかに超える展開はとても面白いのだけれど、これまた陰鬱な展開にぐったりしました。主人公の壊れ方が、素敵と言えば素敵です。


黒川博行:カウント・プラン
どこかこわれた犯罪者たちを追いかける警官のはなし。どれもこれも、異常者もしくは異常者周辺の人々が物語の主役を張るため、当然全編には異常な雰囲気がただよいます。黒川氏お得意の刑事たちの掛け合い漫才を、みごとにぶちこわす異常者たちの描写は、ある意味他の作品にはみられない魅力といえますが、これまた暗い。


黒川博行:大博打
くらーい理由でイケイケ会社の社長の親父(爺さま)を誘拐し、20億円をもぎ取ろうとする男のはなし。これは、あまりにも登場人物たちの味付けが濃すぎるため、途中で胸焼けがして読むのをやめていました。ところが少し経って読んでみると、ハチャメチャに面白い。とくに、誘拐された爺さまが素敵すぎる存在感を発揮します。しかし、いかんせん暗い。


竹内薫:なぜ「科学」はウソをつくのか
タイトルはすこしミスリーディングな感じで、科学的「正しさ」をどのように科学者は担保すべきか、またそれをどのようにジャーナリストはつたえるべきか、自身のこれまでの経験をもとに切れよくまとめた一冊。内容はとても面白かったし、うなずけるところも多かったのだけれど、作者の自伝的思い返しを読んでいると陰鬱としてきます。特に、「トンデモ本」にそれと知らず寄稿してしまったために著者がアカデミックから受けた攻撃など、読んでいて暗い気分になれることうけおいです。途中で夜逃げのエピソードがさらっと書かれていたりして、これまた怖いんだよなあ。


草野厚:歴代首相の経済政策全データ
敗戦直後から小泉内閣までの歴代首相が、どのような舞台背景で任命され、どのような経済政策を行ったのか、簡潔にまとめたもの。しかし、記述はむしろ「政局」的な側面に多くの割合が割かれていたように思います。しかし、このような「政治」評論的な書籍は、もう少し著者の「評価」を、つまり政治的立場を書いてもらわないと、どう読んで良いのかわからず困惑します。あとは、やはりこの分量で「経済政策」をまとめるのは、ちょっと力業過ぎる気がしました。


蔵本由紀非線形力学
非線形科学の先駆的研究者にして京都大学名誉教授の筆者が、極めて複雑な「非線形力学」の内容を、数式をほとんど使わずナラティブに書き下ろしたもの。すべてにおいて平易、そしてトピックは興味深いのに、読んでも読んでもさっぱり理解できない。とても大切なことが書いてあるような気がして、これがわかるとさぞや世の中が違って見えるだろうと思いながら、さっぱりわからない自分の能力に多少暗くなりました。


まあ、基本的にはみなとても面白い本だったのですが。今月はもう少し軽めの方向で望みたいと思います。