北山猛邦:猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条
- 作者: 北山猛邦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/01/09
- メディア: 新書
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心優しく頼りない主人公を描かせれば右に出るものがいない北山氏による、とてつもなく頼りなく危なっかしい名探偵猫柳十一弦先生の活躍第2弾。第1弾を読んでとってもおもしろかったのだけれど、内容をまったく覚えていないのが残念です。読書の記録はこのようなときのために行っていたのだけど、まあそれはしょうがない。きっと書棚のどこかに第1弾があるはずなので、発掘して読み直してみよう。
北山氏の作風と言えば、どこか奇妙なのだけれど懐かしくもあるような世界の中で、ごりごりと異様な出来事がおこり、それを心優しい登場人物たちが解決してゆくイメージがあります。本作もそれに近いと思うのだけれど、猫柳先生のシリーズは横溝正史的な、古き良き大時代的推理小説を、北山氏なりに換骨奪胎し、その大げさな身振りをおもに猫柳先生のすっとぼけた性格と振る舞いでぼきぼき脱臼させる、そんな心地よさがあります(第1弾をよく覚えていないので、定かでは無い部分もあるのですが)。また本作の醍醐味は、猫柳先生が起こりうるであろう犯罪を未然に予見し、そしてその発動をいかに阻止するか、というところにあります。これは、でもよく考えてみると名探偵がいっさい事件を解決しない、ということになりかねない訳ですが、そのあたりを見事に物語として成立させる北山氏の優しい手法は、本来的に殺伐とした世界を浮かび上がらせる可能性のある推理小説を、また違った地平に着地させ、なんだかとても安心です。しかし、どこをどうひねったら、猫柳十一弦などというお名前を思いつくのか。