首藤瓜於:差し手の顔 脳男 2 上・下
- 作者: 首藤瓜於
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/11/12
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前作「脳男」の続編で、登場人物もかなり重複するところがあるのですが、読み始めた時点ではさっぱり覚えていなくて多少とまどいました。でもまあ、本書で徐々に説明されてゆくので、最終的には気になりません。というか、「脳男」を読んでない人でも物語の世界を楽しめてしまい、なおかつ「脳男」読んで見たくなってしまうと言うところに、相変わらずの筆者の巧みさを感じさせられました。
内容はと言うと、なんだか血なまぐささが増量されたように感じます。まあよく人が殺されるし、殺され方も尋常ではありません。一方で、「鈴木一郎」という存在を頂点に成立する人間のこころのありように関する描写も、これもまたなかなか味が濃い。県警本部と所轄の軋轢や管理官の政治性、そしてそれらをぶちこわす茶屋の存在と茶屋を取り巻く奇妙な鑑識官などの存在も、つぶさに描かれているところが憎らしいというか、うまいのです。
相変わらずのスピード感あふれる筆致にどんどんと読む手は進み、気がついたら残り頁は僅少、ほんとうにこれで物語が収束するのかと思ったら見事な返し技を決められた、そんな心持ちにされる展開だったので、ちょっと狙い澄ますがあまりひねりが効き過ぎているような気もしましたが、全体としてはとても楽しく読み通せました。そして、相変わらず「脳男」が思い出せないところが、また心憎いのです。