大森望篇:NOVA 2 書き下ろし日本SFセレクション ノヴァ2

大森望氏が自薦・他薦し編集まで行ったSF短編セレクション第2弾。今回は僕としては法月綸太郎氏、宮部みゆき氏という、一般的にはSF作家に分類されないと思われる人々に加え、津原泰水氏が寄稿されているのが大きな楽しみでした。


でも、このような短編集を読む喜びは、まったく知らなかった作家さんの作品を発見できるところにあると思います。その意味で一番の収穫は曽根圭介氏の「衝突」でした。アンドロイドを主人公として終末的な地球の有り様を描く本作は、なにか伊藤計劃氏的な乾いた破滅感を感じさせつつも、とても読み手に対する心遣いのような優しさがあり、とても楽しめました。大森氏の解説によれば曽根氏は警察ミステリの作家として著名とのこと。是非、そちらも読んで見なければ。


期待して読んだ作家はというと、法月氏はちょっと狙いすぎな感じがしてあまり物語に入り込めず残念。宮部氏は、宮部氏らしいじっとりとした話で暗い気分になれました。津原氏は、相変わらずの文章の美しさに加え、物語としての作り込みが抜群です。「件」という、内田百間の短編で有名なあの妖怪を登場させるところも心憎い。あとは、最近の著作はメタ的すぎてまったくついて行けない新城カズマ氏の、静かで美しい物語も印象的です。


でも一番楽しめたのは、恩田陸氏の「東京の日記」でした。横書き右から左へと言う編集方法の奇抜さだけではなく、しっとりとして落ち着いた中に、とても異常な風景がつめこまれている。しかも、それをまったく感じさせない物語の語り口は、恩田氏の円熟しきった作劇法を充分に堪能させます。ちょっとレベルが違う「上手さ」を、感じさせられました。