桜庭一樹:推定少女

推定少女 (角川文庫)

推定少女 (角川文庫)

義理の父を撃ち殺して逃亡中に出会った不思議な女の子、その宇宙人的なありようと「普通の」家出少女のこころのきりむすび方をえがいたもの。


砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」で、僕の心を撃ちぬきまくった著者の作品が読んでみたい、その思いでいくつか買ってみたなかの一冊が本書であります。でも、なんかぬるい。なにか、著者らしさが感じられないというか、まあ、エンディングが三つある時点で、しかたないよね、という気分になってしまいます。申し訳ありませんが。


これは、僕が今「少女七竈と七人の可愛そうな大人」を読んでいるからかもしれないし、おそらくだからだろうと思うのですが、著者らしい切れ切れ感は、ある意味で至る所に横溢しているのだけれど、なにか作りすぎている気がします。著者の持つ、なにかいわくいいがたい閉塞感のような、そんな感じは、主人公の造形に感じられることはできるのだけれど、なにか軽い。


文章も、あまり筆者の文章を読んだことはないのですが、「砂糖菓子」に比べるとなにか硬い気がします。僕は、筆者の素敵さはその不必要な饒舌さと文語的な語り、つまり近代文学的な雰囲気にあると(勝手に)思っているのですが、その意味では本書は僕には新しすぎる気がしました。いま「少女七竈」を読んでいるのですが、明らかに迫力が違う。もう、わくわくどきどきしながら、頁をめくっております。