閑話休題:新宿LOFTに空手バカボン降臨

知人よりお誘いいただき、3月5日の夜は新宿LOFTにて「ケラ&ザ・シンセサイザーズ」のライブに。ケラ氏と言えば、言わずと知れたナイロン100℃の主催者でもあり、有頂天のボーカルとしても有名な方ですが、僕にとってはなんといっても空手バカボンのメンバーとしての存在が、やはりもっとも思い入れのあるものです。


あれは中学生のころだったか、やたら音楽に詳しい同級生から勧めてもらった1枚のテープに、僕は愕然とさせられました。彼が勧めた曲は「中央線ヤクザブルース」ですが、確かに凄い。内容としては「ヤクザの鉄砲玉として命がけの出入りを次の日に控えた青年が、「タマエ」と名付けた洗濯機に愛を語る」というもの凄くシュールなものですが、ケラ氏の「かわいいやつだぜ、タマエ」と語る声に大槻ケンヂ(確か当時は大槻モヨコだった)が「中央線に朝日が昇る、朝靄の中を電車が走る」と壊れたオペラヴォイスがかぶせるという、悪夢のような素晴らしいアンサンブルに慄然とさせられました。


そのほかにもYMOの「ライディーン」に適当な歌詞をのっけただけの「来るべき世界」や、サザエさんの登場人物に理不尽な行動をせまる「家族の肖像」など、とにかく名曲揃いのこのバンドに、僕は一時期ほんとうに夢中になり、来る日も来る日も空手バカボンを聴き続けていたのを覚えています。そんな思いを持ちながら「ケラ&ザ・シンセサイザーズ」のライブに赴いた僕と知人の頭の中には、宣伝文句に書かれた「某ナゴムバンド復活?」の文字に期待するところが大きかったのです。


でもまあまさかね、みたいな思いと、あっても最後かなあという読みで、ぎりぎりに会場に到着してバーラウンジでとりあえず一杯飲んでいた我々に、流れてきた音楽は、あのキング・クリムゾンのStarlessではないか!これは、もしやと思い急いでステージに駆けつけると、そこにはケラ氏と内田氏に囲まれた大槻ケンヂの姿が!!Starlessに併せて「バカボンー、空手バカボン−、こんにちーわー」と歌う姿は、空手バカボン以外のなにものでもありません!中学生時代の僕のアイドルともいうべきバンドに、まさかこの年になってライブで出会えるなんて、人生でも数少ない感激の体験をしてしまいました。


空手バカボンのライブにであえただけでも感激でしたが、ベスト判に版権やその他の問題で収録されていないと思われる「家族の肖像」「来るべき世界」の二曲が、最後に歌われたのも感動です。欲を言えば、「あの素晴らしい愛をもう一度」を適当に歌っただけの「あの素晴らしい愛をもう一度」や、納豆にネギを刻むとうまいことを力説する「日本の米」なども聴きたかったですが、「労働者M」や「福耳の子供」が生で聴けただけでも幸運でした。その後のケラ氏のライブも楽しかったけれど、やはり空手バカボンは強烈です。一度聴いたら頭に焼き付くくらい、歌詞と曲がいいんだ。キング・クリムゾン戸川純ヤプーズ高円寺百景など、今でも素敵だと思う音楽ばかり聴いていた中高時代を懐かしく思い出してしまいました。戸川純さんの「諦念プシガンカ」も、ヘビーローテーションソングだったなあ。