石崎幸二:≠(ノットイコール)の殺人

≠の殺人 (講談社ノベルス)

≠の殺人 (講談社ノベルス)

ミステリ研究会の構成員である女子高生3人と、なぜか当該研究会の「顧問」である中年会社員は、クリスマスの直前に沖縄列島の離島で催されるパーティーに招待される。そして中年会社員の懸念通り、当然のごとく不思議なたてものや登場人物があらわれ、連続殺人事件が勃発する。


石崎幸二氏といえば、ぼくがこよなく愛する変態ミステリ作家(誉め言葉です!)なのですが、本業の会社員が忙しいのか、なかなか著作が発表されません。久しぶりに発表された本書は、期待を裏切らない馬鹿馬鹿しさに溢れた大変素敵で楽しいもので、氏の健在さを高らかに宣言した一冊と言えます。


その馬鹿馬鹿しさはまずプロローグに見ることができます。ミステリ研究会の「書記長」こと相川ユリの一人称で書かれたこの部分では、まったく意味を持たない自己言及的な解説や、だれもが不思議に思わないであろうことどもの、詳細かつ不必要な説明に大部が割かれ、さっぱり物語は進みません。しかも、つづく第1章ではこれが中年会社員の創作であり、物語の展開にはなんら影響を与えないという、まあ当然と言えば当然のことのためにこの頁数が印刷されたという事実が明らかになり、読んでいる方としてはこの上もなく楽しくなってしまいます。


物語のほうはというと、語り口とは異なり意外と陰惨な出来事が相次ぐのですが、まあそれは本書の主要な部分とは言えないので気にしなくても大丈夫です。とにかく、東川篤哉氏や鳥飼否宇氏にも何か通ずる、ある種のこわれっぷりを確認できただけでも、本書の存在には大きな価値があります。そういえば、石崎氏は私の奉職する東京理科大学の出身なのですね。いまのところ、一番に思い浮かぶ理科大のもっとも有名な卒業生にランクインです。