穂村弘:世界音痴

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

穂村氏の切なく切ない日常を綴ったエッセイ集。


穂村氏の書く文章に通底するテーマとして、「大人になれないわたし」と「世界と関わることが難しいわたし」というものがあるように思えます。本作ではその雰囲気が今まで以上に強く感じられ、文章の内容的には軽く脱力感溢れるものなのですが、その実切々とした世界とのすれ違いが切実にうったえられているような気がして、とても楽しめました。


ただなんだか、その切実感というか、世界との折り合いの悪さに対する絶望感は、前半より後半の方に強く感じられる気がする。と思って巻末の初出一覧をみると、前半は日経新聞で連載していたもので、比較的新しい文章のようです。後半はもうちょっと前の時期に書かれた文章だと言うことは、穂村氏もなんとなく世界と折り合いをつけられるようになったのかな。などと思いながら読んでいると最後に「妻」なるひとことが。えっ、さっきまであれほど「結婚してない」「結婚してない」って書いていたのに。というか、穂村氏が穂村氏であるのは「結婚できない男」というところによるところが大きいと思っていたのに。というわけで調べてみると、なんと穂村氏結婚されて、文筆業との二足のわらじも解消し会社もお辞めになったとのこと。まことにおめでたいことであります。でもなんだかさびしいなあ。。。