マイクル・Z・リューイン:探偵学入門

素人探偵や、副大統領ダニー、のら犬ローヴァー、パウダー警部など、いつもの登場人物やいつもではない登場人物による短編集。


ハヤカワ文庫で最近はじまった「現代短篇の名手たち」シリーズのはじめの5冊のなかに、リューインとウェストレイクが含まれているのはなんとも喜ばしいことです。さすが早川書店だけあって、この手の企画ものには間違いがありません。


一度サラリーマン生活を送った後に大学に戻った僕は、ある時期猛然と読書を開始しました。読書自体は小学生の頃から好きだったのですが、やっぱり大学の建築学科は忙しく、設計会社ではそれこそ眠る時間もありません(その頃は時間の使い方が下手だった。。。)。博士課程にもどって研究とバイトに明け暮れる一方で、時間があればそれこそ便所から食事中まで、あらゆるところで本を読むことができたのは、とてつもない幸せに感じました。それに加え、いままでまったく知らない作品たちを読むことができたことも嬉しかった。その中でも、リューインを知ることができたのは嬉しかったなあ。田口俊樹氏の素敵な訳文と相まって、未読の作品を楽しさと、まだ見ぬ作品が少なくなってしまう寂しさを同時に感じることができたのは、僕にはとても幸せな時間でありました。


その意味で、本編は久しぶりに未読のリューインを読むことができ、とても嬉しいものでした。収録作のいくつかは、おそらくアンソロジーなどで読んだことがありましたが、大半のものは未読作、しかもどれも素晴らしい。ざっと読んだだけではぶっきらぼうで抑揚の少なく感じるのですが、その平板な文章のなかにぎゅうぎゅうと詰め込まれた諧謔の精神には、相変わらずなぜか賑やかな雰囲気を感じさせられます。最近パウダー警部も元気なく、サムスンも渋い作風になってきてしまったけれど、やっぱりシリーズの次回作が楽しみでなりません。はやく書いてくれないかなあ。