ピーター・トレメイン:蛇、もっとも禍し 上・下
- 作者: ピーター・トレメイン,甲斐萬里江
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/11/10
- メディア: 文庫
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- 出版社/メーカー: 東京創元社
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今月の一番の楽しみであったフィデルマシリーズが書店に並んでいたので即購入、即読み終わりました。嗚呼。相変わらずのかちっとした世界観と、フィデルマの端正なこころの声を紡ぎ出す筆致には、いつもながら精緻な美術品を見ているような感興を憶え、ほんとに心地よい。
本作の特徴は、一方で今までの作品とは多少異なり、人間の醜悪さ、露悪さを焦点にあてた、幾分わかりやすい勧善懲悪ものだったように思えます。エンダルフの登場の下りなど、あまりにも予定調和過ぎて今回のフィデルマさんはずいぶん楽をしているものだなあと思ってしまったくらい。ただ、相変わらずの聖書の引用と法典を引用し合う形式で延々と続く会話文のテンションの高まりや、優れて選択的に描き出された風景の美しさ/醜悪さには、やっぱり物語の楽しさ、そして作家の力強さを痛感させられるものがありました。しかし、訳注が巻末に置かれたページ設計は、ちょっと読みにくい。同じページにまとめてはもらえないだろうか。