清野とおる:東京都北区赤羽

東京都北区赤羽 1 (GAコミックススペシャル)

東京都北区赤羽 1 (GAコミックススペシャル)

板橋区出身の筆者が赤羽に移り住んで体験したことを描いた漫画。


実習の授業を一コマ担当しているのですが、今年はまちあるきをしてもらいました。いろいろなまちを歩き、あたりまえと思っている風景のなかに、実はとんでもないものが潜んでいたりする、そんな経験をしてもらいたくて企画した授業です。先日発表をしてもらったのですが、狙い通りみんな素敵な場所を見つけてくれました。南千住の再開発地域や中野、大井町や京島・向島など、ぼくも行ってみたくなってしまうような風景を次々とみることができ、とても楽しかった。


ぼくだったらどこを歩いたかなあと考えると、いまならば間違いなく赤羽です。赤羽の飲み屋街はとても素敵で、東京の北の外れとは決して思えない、みょうな雰囲気に溢れたイカしたまちだと思うのです。本書は、その赤羽のいかがわしさと楽しさを、十全に伝えてくれる優れて都市的な漫画だと思います。これを読めば赤羽に行きたくなるとの著者の言葉の通り、こんな異世界が日常的に存在する赤羽というまちに、むしろ引っ越したくなる気持ちをおさえられません。絵柄はなんというか、諸星大次郎的な表現に桜玉吉的構成を加えたような、いわくいいがたいヘタウマ感が漂うのですが、突然出てくるうさぎさんとかパンダさんとかが最高です。短編集の帯には漫☆画太郎大先生が絶賛の言葉をよせていますが、確かにこの人は突き抜け感があって素晴らしい。帯の著者紹介に単行本が二冊のせられていますが、括弧書きで「いずれも絶版」と書かれているとことか、もう最高。いやあ、久しぶりにいい漫画読みました。最近では一番ですね。