林譲治:ファントマは哭く
- 作者: 林譲治
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/10
- メディア: 単行本
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申し訳ないのだけれど、このお話し引っ張りすぎではないかなあ。編集者の意向かも知れないけれど、やはりこのシリーズは地球人以外の知性体とのファーストコンタクトまでの緊張感と、火星の人類と地球の人類との軋轢の泥臭さの対比にその良さがあるのであって、ここまでくるとシリーズを引き延ばしにかかっているとしか思えないのです。それがどのようなところに現れるのかというと、例えばなんだか皆さん涙もろくって、異星人にメッセージが届かないだけで地球人は泣きの涙に暮れてしまうし、そうかと思うとふとしたことで相手に極端な感情移入をしてしまい、心強くなって元気になってしまう。この単純さは、それはそれで良くも悪くもないのだけれど、ここまで繰り出されると単調さにとって変わってしまうのです。別に「SF」というジャンル、または「ジャンル」という枠組みにかかわる問題でも無いかとは思うのですが、枠組みにのっからないと成立しない物語というのは、マニアックな楽しみはあるのだけれども、やっぱり力強さに欠けてしまうと思うのです。具体的に言えば、本作を林氏の作品を読んだことの無い人に勧められるかというと、残念ながら進められない。少なくとも前二作を読んでからではないと、ちっとも面白くないはずです。本作の完成度は高いのだけれど、そのあたりの残念さが感じられてしまいました。