門井慶喜:天才たちの値段

天才たちの値段

天才たちの値段

美術短大で絵画を教える大学教師は、ふとしたことでフェルメールのものとされる絵の鑑定を依頼される。もちろん贋作だと断定した彼の前に、絵の真贋を味覚で判断できると自称する男が現れ、その絵を買い取ってしまう。これはまずいとあたふたする大学教師を尻目に、その絵の真の価値を明らかにする男は、その後も様々な絵の真贋にまつわる謎を解き明かす。


最近いくつか読んでみて、その完成度の高さと作劇法の巧みさ、とりわけ諧謔的な展開の気持ちよさにすっかり大好きになった門井氏ですが、本書が一番はじめの作品だと言うことでとりあえず押さえておこうと読んでみたのですが、この質の高さにはびっくりです。やはり最初の作品らしく、幾分力がはいりすぎているというか、恥ずかしくなってしまうくらいのかっこつけかたは感じられるものの、ストーリーの構築はいうまでもなく、切れの良い文章、押さえた語り口にもかかわらず情熱的に展開する物語、台詞の無駄の無さ、どれを取っても極めて上質な、素敵なエンターテイメントで楽しめました。まだもう一作、門井氏の作品では読んだことのない物があるので、急いで読んでみないと。あ、でもそうすると門井氏の作品は新作を待つしか無くなるのか。それも残念。。。