道尾秀介:骸の爪

骸の爪 (幻冬舎文庫)

骸の爪 (幻冬舎文庫)

手違いで一晩泊まることとなった仏像工房で、主人公である作家の男性は奇怪な一晩を体験する。次の朝、工房の職人が失踪し、なぜか異様な空気に包まれる。不審でならない主人公は、親友の「霊現象探求家」なる男性と共にその工房を再び訪れ、隠された過去を暴き出す話。

道尾氏の作品は、単行本でよく書店に並んでいるので気になっていました。また、年末の図書ランキングでもいつも上位に食い込み、しかもその作品量が半端無い。一度は読んでみようと思ったのだけれど、ホラー系が苦手な私としてはあまり手が進まず、ようやく文庫で一冊読むことができました。しかし、なんだか残念。物語は極めて典型的で、あっというまに予測が可能な気がします。それはそれで小説の善し悪しとは関係ないと思うのだけれど、それ以外の部分もあまりに典型的すぎる気がします。筋立てを先に作ってお化粧をしたような、なにか意外感を感じることができないこの雰囲気は、物語の筋立てにとってはかなり厳しい条件のように思います。仏像を主題に据えたとは言いますが、ある種節度に溢れた描写からは、知識を持っている人にはあまりペダンティックな魅力を感じることは難しいのではないのかなあ。もう少しじっとりとした文章ならば、印象も変わったと思うのですが。