玉野和志:創価学会の研究

創価学会の研究 (講談社現代新書)

創価学会の研究 (講談社現代新書)

創価学会について、都市の地域社会を専門とする社会学者が、基本的にはこれまでの研究を分析する形式(メタ分析)を中心に論じたもの。

先日の衆議院選挙の勉強にと、ちょうど島田裕巳氏の「創価学会」を読んだ直後でした。「創価学会」で島田氏は、うろ覚えで恐縮ですが、創価学会が高度成長期に都市部へ流入してきた人々の「地域コミュニティ」の代替組織として非常に効果的に機能したこと、また折伏という手法での信徒拡大から世代間への信教の受け渡しへと信仰の広がり方が変遷していること、また信者の高学歴化・社会的地位の向上などに伴い、池田大作氏が推し進めた「庶民のための宗教」的な側面が、今後の創価学会の発展を阻害する可能性があることなどが示唆され、とても興味深く読ませていただきました。

本書は、島田氏の手法とは幾分違い、まず創価学会の信者の一日の生活を詳しく解説するところから始めます。そして入信の動機などについて紹介した上で、あくまで社会学的に創価学会という宗教団体を開設し、社会の仲で位置づけていきます。またこれまでの創価学会研究を、海外の研究を含めレビューし、創価学会がどのようにそれ以外の社会から受け取られていたのかを分析し、創価学会の扱われ方に反映した日本社会の構図を鮮やかに描き出してゆきます。

島田氏の著作との大きな違いは、上記のような作業によって、創価学会の政治的な位置づけ、特に自民党との親和性を分析し、それによる組織の行き詰まりを予測していることにあります。本書は昨年の10月20日に初版が発行されていますが、そこでの分析を今になって読むと、これまた自公連立政権の瓦解を予測したようにも見え、興味深くもあり、現状認識の大きな助けとなる性質を持っています。

またなによりも面白かったのは、労働組合、もしくは社会的地位が低く労働組合する組織できない人たちの精神的なよりどころとしての創価学会の役割を細かく分析することで、本書を単なる「創価学会」研究とするのではなく、戦後から今に至るまでの労働者の歴史の解説書としても読める本書の構成であります。これが「組合」とかのはなしだと良く現実感が沸かないのだけれど、「創価学会」という分かりやすい組織だと、とたんに現実感にかられるのが不思議で麻里ません。文章は平易で読みやすく、表現も素人にもよめる、単純な構成となっています。今回の選挙を機に政治に興味をもったかあた。是非ご一読をお勧めします。