山本弘:地球移動作戦

地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

地球移動作戦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

地球に天体がぶつかりそうになって大変なため、地球を動かすことにしたはなし。

最近アップしていなかったのは、授業の準備やら遅れた締切やらに追われ続け、あまり本を読む時間が取れなかったこともあるのですが、一方であんまり感想を書きたくなるような本に巡り会えていなかったこともあります。本書は、久しぶりに感想を記録しておきたくなる本でした。

内容は、まあ良くある話で、イカサマみたいな画期的エネルギー源が発見された未来を舞台とし、ペットのようなAIをみなさんが侍らせていたりするという感じ。でも全体的に本書の挑戦は、地球へのカタストロフとその回避という、語られ尽くされた感のある物語をどのように演出するか、その一点にあるように感じました。だって最初から、結末を予測しながら読めてしまうのですから、どうやったって素直に驚くことができない。そこを作者は、さまざまなエピソードと思わぬ展開、そしてテンポ良く進む作劇法で、見事に世界を作り上げてゆきます。テロリストやカルティックな集団、そして主人公の恋愛関係など、極めて凡庸でありふれたガジェットたちが、これでもかと詰め込まれたときの凄さを思い知りました。なんだかあんまりほめてないような文章になってしまいましたが、とても楽しめる一冊でしたよ。