佐々木譲:愚か者の盟約
- 作者: 佐々木譲
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/09/05
- メディア: 文庫
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なんでまた、こんな古くさい物語が店頭に平積みにされているのかと思ったのだけれど、読んでみてしびれるような興奮とともに理解が至りました。これは、起こらなかった「政権交代」を描いたものであり、そこに描かれた図式は、多少形を変えながらではあるけれど、いま現在ぼくたちが経験している、政治的大転換を予想したものなのです。
それはともかく、最後に至るまでもとても面白い。本書は社会党という党の内部を、良く知るものがその良さと悪さを、赤裸々に書ききったものだと言えます。江田五月なんてとても懐かしい名前なのだけれども、こういう背景があったのか。横路さんも、なんだか突然消えてしまったけれど、こういうことなのか。その頃は、なんとなくイメージとしてしか捉えられなかった人々の横顔が、党内部の力学によって語られたとき、はからずも彩りを増してしまうのは、とても面白い。また、その視点から語られる自民党の政治家、特に中曽根氏の描かれかたは、ご本人には申し訳ないのだけれど、とても痛快でたまりません。
途中でなんとも不必要に思えるエピソードが出てきたりして、大丈夫かなこの物語と思ったのだけれど、その心配を杞憂にしてしまう作者の筆力は、さすがの一言です。しかし、政治をこのように語るという手法があるのかと、なんだか感心しました。小説家の政治に対する参加の方式として、このような方法はとても良いなあ。しかし、自社さ政権の成立と瓦解は、さぞかし作者にとっては悔しかったろうなあ。。。