穂村弘:にょにょっ記

にょにょっ記

にょにょっ記

歌人でサラリーマンの穂村氏が、日々の生活のなかでであう様々なことどもや、天使との会話、妄想などを日記調に書き綴ったもの。

最高です。読み終わるには一時間半くらいしかかからなかったけれど、この幸福感は一年間はぜったいに持続する。とてもお得で幸せでハッピーな一冊。是非ご家庭に一冊。でも、褒めてばかりいるだけではなにがよいのかさっぱり伝わらないし、自分のなかに取り込むこともできない。だから言語化してみようと思います。そのための読書記録だしね。

まず、短い。これは、短歌みたいなものだと思います。そぎおとしてゆくなかで、素敵なものを最後に残す、そのぎりぎり感が、異常に浮世離れした文章から、逆に先鋭的に伝わってきます。例えば、こんな感じ。
「11月24日 アンティーク屋
アンティーク屋に入る。
が、一秒で出る。
私はアンティーク屋が大好き。
でも、そこは、アンティーク屋でありすぎた。
甲冑とかだもん。」

つぎ、ことばづかいが美しい。上の「アンティーク屋」をみるだけでも、素敵なことばがたくさん。「私は」「大好き」「ありすぎた」「だもん」。いいなあ、僕もこういうことばを使えるようになりたい。

加えて、現実と妄想の交錯さが素敵。ときどき出てくる天使との会話が、僕のハートを勢いよく脱臼させる。
「8月31日 名前
天使がテレビを指さして「泉ピコン」と言った。
惜しい。」

あとはなにかなあ。そうだ、デザイン。本の装丁、挿画、紙質、フォント、箱付きという本の造り。すべてが美しい。これは、やっぱり文章の美しさにつうづるものがあるし、この変質的なこだわりが、この本を一つの作品として、成立させているように思います。

いろいろ書いたけど、是非読んでもらいたい。みんなきっと、穂村さんみたいなおっさん(おばさん)になりたくなると思うよ。