山本弘:闇が落ちる前に、もう一度
- 作者: 山本弘
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2007/08/24
- メディア: 文庫
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「神は沈黙せず」があまりにも良かったので、既刊の本書を読んでみることにしました。全体的には、なんだかホラーテイストが強くて、多少苦手な部類にはいる物語ばかりでした。一方で、先日日本SF傑作選を読んだからかもしれませんが、SFとはどのような小説のありかたか、面白く考えさせられたこともまた事実であります。
本書で描かれる風景は、主人公があたりまえと思って受け止めている現実になにか微妙なゆがみが生じ、それが増幅され最後には破滅的な展開をむかえることになります。これは、そういえばそのままフィリップ・K・ディックの世界にあてはまるといえばあてはまる。ただ、ディックの場合は、なんというか本人も無自覚的にあちら側の、おそろしい世界に踏み出してしまっているのに対し、本書はある程度以上、作者のブレーキ感というか、きわめて人間的な理性とでもいうものが感じられます。それが、本書の堅実さでもあり、いくぶん物足りないところでもあります。