コニー・ウィリス:わが愛しき娘たちよ

コニー・ウィリスの傑作短編集。おそらくぼくがはじめて読んだコニー・ウィリスであり、その衝撃はいまだに忘れがたい。

これはおそらく大学1年生、もう14年も前に読んだのだけれど、そのときやはり一番印象に残った作品が、邦題のタイトルでもある「わが愛しき娘たちよ」でした。これは、おそらくどこかの人工衛星の内部に作られた寄宿舎を舞台とした物語で、そこで暮らす男子の間でいつのまにか流行した、動物を性的玩具に改造したものと、それに気がついた女子の姿が描かれる。はじめて読んだときはその衝撃的な筋書きと表現にびっくりしたけれど、今読んでみると、けっこう素直に頭に入るところが面白かった。

むしろ今回読んでみてぐっときたのは、「ドゥームズデイ・ブック」や「マーブル・アーチの風」を彷彿とさせる「見張り」や、どこまでいってもかみ合わないウィリスお得意のコメディ「月がとっても青いから」、またどこか茫漠としてよく訳がわからないのだけれどそれでもしみじみとしてしまう「鏡の中のシドン」などでした。原題は「Fire Watch」、つまり「見張り」なんですね。なるほど、と思わせる完成度です。でも、どれを読んでもとても良い。

これも、なぜいまごろになって書店に平積みになっているのだろう。1992年の初版、2007年に二刷なので、全然売れていないと言うことだと思うのだけれど、でもこのような素敵な小説は、是非販売をつづけてもらいたいです。

わが愛しき娘たちよ (ハヤカワ文庫SF)

わが愛しき娘たちよ (ハヤカワ文庫SF)