リチャード・スターク:汚れた7人

フットボールスタジアムから強奪した大金を、ほとぼりがさめるまで仲間から預かった主人公のパーカーは、潜伏先で何者かにその金を奪い取られ、同棲していた女性まで殺されてしまう。だれが金を奪い女性を殺したのか、あまり仲良しとは言い難い仲間たちと、殺伐とした犯人捜しを行うはなし。

先日はじめて読んだウエストレイクの別名義の作品。ウエストレイクの「ホットロック」が「特攻野郎Aチーム」の世界だとすれば、こちらは「ミッションインポッシブル」の世界という感じでしょうか。いや、「ルパン三世」と「ゴルゴ13」か。。まとにかく、こちらはとにかく陰鬱で、主人公も冷血で傲慢、なんとも救いがないお話しかと思いきや、意外と笑えないおかしみにあふれていて楽しめました。

やっぱりプロットのオフビートぶりとテンポの良さは、どんなに暗いはなしを指向していても、全体の雰囲気を明るいというか、にぎやかなものにするからなのだろうか。主人公の仲間たちが仲間割れを始めて殺し合うさまなど、痛々しいはずなのになにかおかしみがあります。あと、主人公たちが犯人を捜すシーンなど、強盗を稼業とするひとたちとは思えないくらい勤勉な姿が描かれていて、これだけまじめに働けるのであれば、きちんとした仕事しろよ!といいたくなるくらいの、おかしみに溢れています。ラストの落ちも、ベタだけれどとても良い。

こういう、噂にしか聞いたことが無く、荻窪の古本屋でしか見たことがなかったような素敵な作品たちが、再版されるのはとても嬉しいことです。角川書店さんには、是非これからも旧作をリリースしていただきたいものです。そして文春さんには新作をどしどし刊行していただきたい。

汚れた7人 (角川文庫)

汚れた7人 (角川文庫)