パオロ・マッツァリーノ:日本列島プチ改造論

偽装イタリア人パオロ・マッツァリーノ氏による、時事問題解説集。ネット連載されたコラムを集めたものらしく、計100編の小ネタからなる。

パオロ氏は、語り口は柔らかく内容は砕けているように思えるのだけど、実際のところ主張はきわめてまっとう。「反社会学講座」という傑作にも現れていた、ある程度マクロデータ分析を専門に行う学者であれば、あやういなあと思いつつたまに気がつかずすましてしまうような重大な内容を、軽快に根拠に基づきながら反証してゆく態度は、とても学問的というか、研究者的だなあと思っていました。

本書は、それからすれば同様の語り口でより身近なテーマを語ったものであり、内容のバラエティは富むものの、僕が面白いと感じた研究者的な態度からは少し距離が生じ、なんだかわかりやすすぎる。だからといってつまらなくなったわけではなくて、むしろ「日常的」な出来事を、慣用語を使って「非日常」または「非常識」な角度で解説する作者の姿勢は、本気なのかギャグなのか、なんともわかりかねるところもある。その主張をうっかり信じてしまったりすると、大きな陥穽にはまりこんでしまいそうでもあり、またそのような人々の姿をみてほくそ笑む作者の素直な感性も感じられないわけでもなく、まあなんというか、結構面白かったです。

でも、やっぱり話題が多すぎて、一つひとつの「つっこみ」の力強さが分散されてしまった気がするなあ。ものごとの見方に対する方法論の事例集だとも読めるのだけれど、作者にはやはりもっと凝縮された力強い悪意を持って、「常識」的な思考を粉砕してもらいたいと思うのです。

日本列島プチ改造論

日本列島プチ改造論