アレステア・レナルズ:啓示空間

高貴な血筋でマッドなサイエンティストの親父を持つ男は、宇宙の果ての星で異種族の遺跡を発掘中に大発見をしたと思った矢先、権力闘争に巻き込まれ長期の幽閉生活を送る羽目になる。かたや、その星に身体のほとんどを機械化することによって長期の宇宙旅行を可能とした「ウルトラ族」の集団が近づきつつあり、なおかつこれまた銀河の辺境であるイエローストーン星では、戦争で負傷して冷凍睡眠されたのち、その星に誤配送され人生をめちゃくちゃにされた女性戦士が、やけっぱちになって暗殺者ビジネスに精をだす。このようなまったくすれ違うはずのないひとたちが、ある巨大で不可解な意志によってむりやりひきあわされたうえ、人類の危機を救うのか、救わないのかよくわからないことになるはなし。

物語の概要は正しくないかも知れませんが、雰囲気としてはこんな感じであまりまちがいでは無いと思います。とにかく、文庫にして38mmの厚さのなかに、これでもか!とつぎこまれたアイディアとガジェットの数々は、読んでいる内にどれがなにで誰がそれか分からなくなること必至にもかかわらず、気がつくとすっかり不気味でエキゾチックな世界に僕を没入させ、睡眠不足の日々にたたき込んだのです。

やっぱり小説って見てくれで判断してはいけないと、しみじみ感じさせられました。小難しそうなタイトルとあまりのぶ厚さに、これも最近流行のひとりごとみたいなお話しかと思って読んでいなかったのだけれど、ぜんぜん違いました。なんというか、J. R. R.マーティンにウィリアム・ギブソンを加えたような、80年代的SFの薫りが充満した、とても洗練された一冊でした。これでお話しが予定調和的にならないところがものすごい。

翻訳も最後までテンション高く雰囲気を伝える文体で、とても良かったです。中原尚哉さんかあ。もっと翻訳を読んでみたくなりました。

啓示空間 (ハヤカワ文庫SF)

啓示空間 (ハヤカワ文庫SF)