杉作J太郎「恋と股間」

恋と股間 (よりみちパン!セ)

恋と股間 (よりみちパン!セ)

彼女のつくりかたや嫌われないメールの出し方、弱みを見せる生き方やお金を気にしない生き方など、基本的には恋愛、また大部分においては他者との交歓における様々な局面でのサヴァイヴァル方法についてまとめたもの。



最近なかなかブログをまとめる時間と余裕が無く、これぞというもの、これは誰にでも読んでもらいたい、と思うもののみを記録しようと思っていたのだが、久しぶりにガツンと来る本に出会うことができた。これ最高です。

彼女がいない、モテない男子に向けて書かれたという装いの本書は、実のところ「他者」との関わり、またもっとも身近な他者である「自分」とどのようにして付き合えばよいのか、極めてプラクティカルに説明したものであると読める。例えば杉作氏は、ストレスをためないためには「早めに誰かのそばへ行き、「もうおしまいだ」とつぶやいておくこと」をお勧めし、また自分自身の「欲」と決別するためには「死ぬ気でその境地を開くというか、粘り腰で必死にあきらめるというか、「命がけでリラックスする」という心境に、飛び込んでいかないとね」とアドヴァイスする。この、「命がけでリラックス」みたいな表現は本書の随所にみられるのだけれど、これがなんというか、とてもいいんだ。なんだか、簡単にそんなこと言えないよ、と思うような言葉の難しさを、とても端的に表している気がして。



またこの本のとても素敵なところは、恋愛という関係を通して「他者」に関するとても大切なところを、堂々と語っているところだと思う。「「何をしてもいい」と言われた場合、本当にしていいのはどこまでですか?」という質問に対し、杉作氏は「正味のところ、相手はかなりなことを望んでいると思われます」と答えながらも、それは相手が何を欲しているのか、まず探らなければならないと言う。



「それを探りつつも、やっぱり相手の気持ちは自分のことのようにはわかることができないから、おいそれと「答え」をだせないんです。むしろ、「相手の気持ちは簡単にはわからない」からこそ、ぼくたちの「この人は、何を望んでいるのかな?」という探求も、「相手の顔色をうかがう」という領域をこえて、ときには生きるか死ぬかといった壮絶な行いになったりするわけじゃないですか。」



ね、かっこいいでしょう。このとてもまっとうで素敵な言葉を、脱力感にみなぎった文脈に乗せて語る感覚は、とてもリーチが長いというか、僕の心をゆさぶるものがあり、正直その中学校男子的下ネタ満載の表現ゆえ混み合った電車で読むには多少ためらわれるところがある本書は、今月の僕のベストの一冊に輝いたのでした。