パトリシア・A・マキリップ「オドの魔法学校」
- 作者: パトリシア・A.マキリップ,Patricia A. Mckillip,原島文世
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 文庫
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なかなか素敵な物語でした。全体的に「幻想的」な雰囲気が漂うが、物語の輪郭ははっきりと定まり、叙情的描写に流されることなくきちんと文章が構築されている。ところどころ、象徴的で冗長な描写が見られ、いま一体自分が何を読んでいるのか見失いそうになることもあるが、良く読めば物語の筋としっかりとリンクした描写で、物語の雰囲気を効果的に盛り上げている。物語全体としての印象は、しかしながら不思議なものがあり、勧善懲悪なのかと言えばそうでもなく、主人公がなぜこのような目に遭わなければいけないのか、一連の騒動の結果誰か幸せになったのか、あまりよくわからないところが面白い。物語の登場人物達は、それほど多くもない言葉の中でしっかり性格が書き込まれているのだが、結果的に予定調和的世界とはほんの少し異なった地点に最終的に着地しているところが、不思議でもあり楽しくもあった。翻訳も素直で調子よく、とても読みやすい。過剰にエキゾチックな表紙も美しいと思いました。(パトリシア・A・マキリップ著、創元推理文庫、2008年2月、1000円)