倉阪鬼一郎「騙し絵の館」

騙し絵の館 (創元クライム・クラブ)

騙し絵の館 (創元クライム・クラブ)

少女連続殺人事件の犯人を駆け出しミステリ作家が推理する話。冒頭から不思議な館とそこに住む女性、並びに執事の挿話が展開されるのだが、その人達も犯人捜しに深く関係する。



あんまり倉阪氏の小説が自分の好みではないことは分かってはいたのだが、某所で絶賛されていたため購入。しかしやっぱり駄目であった。。駄目な理由は、やはりいわゆる「幻想小説」がまったく自分の趣味に合わないことに原因がある。それでも以前はいわゆる「幻想小説」を読んではいたのだが、年々好みが狭くなってきたのか、あんまり楽しめないんだなあ。



幻想小説」というものが、実際どのような小説を指すのかはよく分からないのだが、いわゆる「幻想小説」または「幻想文学」を冠したシリーズを読んだことがあって、記憶によればそれは日影丈吉谷崎潤一郎中井英夫夢野久作石川淳のような、それはそれは錚々たるメンバーだった。この人達の小説ならば、「幻想文学」だろうがなんだろうが、何を読んだって面白いのだ。しかし、それが渋澤龍彦になると、ちょっとあやしくなってくる。澁澤氏の小説は、雰囲気は良いのだがそれ以外があまりにも寂しい気がして、それならば氏の翻訳の方が全然良いなあと思うのである。それ以降の僕の中での同じ系列に連なる作家と言えば、これはもう津原泰水氏と倉阪氏なのだが、やっぱりいわゆる幻想文学的な小説は楽しめない場合が多い。



本作は、なにやら茫漠とした中で、様々な人々の独白が響きあうという構成を持つ。しかしそのそれぞれの響きは決して和音を奏でることはなく、なにか神経に障る、非常に落ち着かない雰囲気を醸し出す。このような雰囲気を楽しめる人ならば、本作を充分に楽しむことはできるのであろうが、ぼくは駄目だった。とにかく、やたら思わせぶりな記述は単にもどかしく、茫漠とした雰囲気は、結局何がなにやらさっぱりわからないだけで、なんだか損した気分がするぞ。自分の理解力の問題もあるとは思うのだが、もう少し読みやすく書いてもらわないと、僕にはわからない。なんだかなあ、習作的というか、推敲前の作品という感じがして、その危うさは狙ったところだとは思うのだが、僕には合わない路線でした。