ロイス・マクマスター・ビジョルド「ヴォル・ゲーム」
- 作者: ロイス・マクマスタービジョルド,Lois McMaster Bujold,小木曽絢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/10
- メディア: 文庫
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ヒューゴー賞受賞作品にはよくあることだが、なんだか複雑でわかりにくい。というか、前段の気象観測所時代のエピソードは、物語全体の中でどのような位置づけなのか、なんだか不思議だなあ。確かにある一人のキャラクターの描写にはとても印象深いエピソードとはなっているが、それでもこんなに頁を割く必要があったのだろうか。まあ、面白いから良いのだけれど。もとい、本作も主人公のアンチヒーローぶりがいかん無く発揮される良作です。しかし初めて読んだ時はまったく気にもならなかったのだが、本シリーズは基本的には形而上学的世界で展開されるというか、マイルズの独り言とその延長上あるオーバー人気味の対話で展開されてゆく、なんとも複雑な物語なのである。物語の筋は極めて行き当たりばったりに決定され、結末までなんともうやむやというか、割り切れないところが多い。しかしそれでも基本的にはハッピーエンドに回収されてゆくところが本シリーズの良さではあるのだが、この複雑さは計算されてのことなのか、それとも行き当たりばったりで物語を構築しているのか、多少不思議だ。このシリーズはいくら読んでも、極めてマッチョな世界を脱構築してゆこうとするベクトルと、いわゆる男の子的疑似軍事物語の境目が微妙で、それがまた面白いのです。