レイア・ルース・ロビンソン「研修医エブリンと夏の殺人鬼」

研修医エヴリンと夏の殺人鬼 (創元推理文庫)

研修医エヴリンと夏の殺人鬼 (創元推理文庫)

救急救命室に研修医として勤務するエブリンという若い女性は、ある日突然暴行されそうになるのだが、その直後に友人のリサの友人が惨殺され、人形がその傍らに置かれているという事件が起こる。そのまた直後にはリサ自身が同様の状況で殺されてしまい、大変なショックを受けつつもなぜか独自に犯人を見つけようと試みる。

この研修医エブリンシリーズの2作目「研修医に死の贈り物を」がなかなか微妙な出来だったので、この作家は本当に面白いのかどうなのか不思議に思い1作目を読んでみたのだが、まあ期待通りというか残念というか大して面白くない。基本的にはテレビドラマ的ドラマティックで映像的な場面を多用しつつ、医学用語をちりばめてそれなりの雰囲気を演出し、しかも主人公は発情期を常に向かえているらしく誰にでも性的欲情を勃発させる。何ともわかりやすく、テレビ的な展開でうんざりする。このテレビ的というのはアナロジーではなく本当にそんな感じがするということで、なんだか脚本を読んでいるような気すらしてくる。つまり、ある部分では不必要までに説明的なのだが(人間関係の説明など)、それが起こっているところの描写は厳しく切り捨てられているため、例えば病院の建築的構成や、その周囲の環境の雰囲気などはまったく伝わってこない。また、各所にちりばめられた医学用語は、まったく理解ができず、また理解する必要もまったくないため、単に効果音として使われているだけで、できればない方が良い。また、しょっちゅういろんな人に発情し続ける主人公の性格も不可解である。といっても、途中で投げ捨てたくなったり本当に投げ捨ててしまったりするほどのものでもなく、きちんと最後まで読み通すことができる程度のレベルではあり、冷静に考えれば一つの小説としては標準以上の質を保っていることもまた確かではあるのだが、なんだかなあ。