ヘニング・マンケル「リガの犬たち」

リガの犬たち (創元推理文庫)

リガの犬たち (創元推理文庫)

スウェーデン南部の海岸に銃殺された2人の男の乗った救命ボートが漂着、その出所と目されるラトヴィアから捜査官が派遣され、ラトヴィアマターということになり一件落着かと思いきや、捜査官がラトヴィアに帰国した直後に殺害され、主人此のヴァランダーがラトヴィアに派遣される。その後、ラトヴィアの警察組織の腐敗にまつわる大騒動にヴァランダーは巻き込まれて、大変な目に遭う。

これはスパイ小説でした。雰囲気としては懐かしのフレデリック・フォーサイスというか、つまり東西冷戦時代の雰囲気がぷんぷん漂うのだが、この小説が凄いところはそれが書かれた時代には現在進行形で進行していたところにある。それはそうと。これは今まで読んだヘニング・マンケルの小説とはまったく違った構成だった。ヴァーランダーはおそるべき陰謀に巻き込まれ、スパイさながらの潜入捜査を行うのだが、なんと銃撃戦に巻き込まれ九死に一生を得る。しかも、不思議な女性とのロマンス付きである。緩慢とした衰退へ向かうスウェーデン人に向けたアクション活劇大作かとも読むことができるぐらい、大げさで現実感のない物語である。しかし、それはそれ自体で小説の欠点では全くなく、そういうものとして非常に楽しめた。ただ、このテイストが続くとちょっと付き合いきれないなあ。次を読むのは少し待ってからしようと思う。