エドモンド・ハミルトン「鉄の神経お許しを 他全短編 キャプテン・フューチャー全集11」

キャプテン・フューチャーシリーズの短編やコラムを集めたもの。緑色の気持ち悪い表紙が特徴。

友人のY本氏はこのシリーズを評して曰く、これは落語だとのことだが、まさにまあそんな感じで、千鳥足風とでも言うべきもつれた足取りで物語は進み、その部分において大きな予想不可能性を持つ本シリーズは、それでもやっぱり著者独特の型にのっとって書かれた作品であるところが、その安心感を担保している。まあ、こんないい方をする必要は全然無くて、とにかく典型的水戸黄門式予定調和の物語は、ところどころで作者の突然の錯乱またはアルコール摂取による記憶障害等と思われる理由で脱線し、おかしな展開を見せる。この、まったくどきどきもはらはらもしないのに、意外感を愉しむことができるのが、キャプテン・フューチャーシリーズの魅力というべきか。本巻はなんだかどうでもよいコラムなどに頁数がとられ、物語の分量が少なめだったのが気にはなったが、それでも相変わらずのグルーブ感とB級テイストはとても愉しめた。特に、金属でできたアンドロイドが精神的不調のためはるか彼方の星に出張し、そこでとんでもない事件に遭遇する表題作は傑作。アンドロイドの精神的不調の内容や原因を全く読み取ることのできない破綻した描写を含め、徹底的に馬鹿馬鹿しくてとても面白かった。