ジョージ・R・R・マーティン「王狼たちの戦旗 下 炎と氷の歌2」

王狼たちの戦旗 (下) (氷と炎の歌 2)

王狼たちの戦旗 (下) (氷と炎の歌 2)

前作で各地に現れた王を名乗る人々は、そのそれぞれと戦いを始める。それにともないケイトリンとティリオンとサンサは大変な思いをするのだが、それと同時に相変わらずアリアは逃げ続け、ジョンは北方で大変なことになり、ダヴォスは主要キャラクターへと格上げされ、海の彼方では相変わらずデナーリスが苦労する。

なんだか著者はあまり素直な人格を備えていないようで、感情移入してしまう茅楽たーたちはどれもこれもあまり明るい将来が待っていないような展開を描いてしまうため、本巻も手に取ってから読み出すまでに多少な時間がかかり、読みはじめもなにか暗い印象があってなかなか波に乗ることができなかった、、と思ったのも数頁のことで、あっというまにまたしても著者の魔の手に捉えられてしまい、激動のドラマも数日のうちに読み切ってしまったのだが、相変わらず皆さんの将来が不安でたまらない。やはり多少陰鬱な気分になってしまうのは、おそらく著者が物語の視点として選ぶ人々が、みな囚われの身であったり、寒い地方をうろついていたり、逃亡中であったり、窮地に陥っている人々だからだとは思う。しかしまた面白いのは、それでもその人々の行く末になにか明るい光と驚くべき展開を、著者が周到に用意しているからなのだ。しかししかし腹立たしいのは、これで世の中全てうまくいくと思った瞬間、驚くべきことがまたまた発生して、ああ、人生とは上手くゆかぬものなのだと思わされてしまうところである。たかだか一人の人間の構築物にここまでのめり込み、感情移入し、こころが揺り動かされると言うことは、なにか腹立たしくもとても驚くべき、素晴らしいことなのだなあと感じつつ、さて第3部の単行本を購入すべきか否か、悩ましく思う日々なのです。