マイケル・ムアコック「杖の秘密 ルーンの杖秘録4」

前巻でどことも知れぬ時空にとばされた主人公は、理不尽な指令に背き恋人のいる方面へと船を向けるのだが、大蛇がいっぱい襲ってきて船の進行方向を変えさせるという強引な妨害に遭い、指令通り「ルーンの杖」を探すことになる。その後いろいろあって、結局悪の帝国をやっつける。

前巻の解説だったか、ムアコックの作劇法を読んでからどんどんとこの物語に対する魅力というか、読書に対するモチベーションが減退する一方なのだが、本巻でもある意味では期待通りの展開が繰り広げられ、確かに飽きさせはしないものの、もはや物語としての深みを全く失ってしまっている。そもそもなんだかゲームのシナリオみたいだなあと思って読んでいたのだが、やはり4頁に1回は主人公に危機が訪れるなど、ゲーム的に厳格に決められた約束事に従って執筆を進めたなどと書かれては、興醒めも甚だしい。それはそれとして物語の面白さは別に評価すべきだとは思うのだが、正直言って読み飛ばすには丁度良く、じっくり読むには耐え難い。大体、あの悪の帝国はあっさりと瓦解してしまうし、最後の一大戦争もなんだか勢いだけは良いのだが途中は全く描かれず、最後はばたばたと死んで行く中で、予定調和の神のなせる技か、なぜか主人公の思うとおりに物語は収束して行く。やはりゲームのシナリオとして見るのが妥当なのか、それともゲームのシナリオがムアコックを模倣したのか、そのあたりは定かではないが、質としては同じような物である。80年代には斬新で楽しい読み物だったのかも知れないが、いま楽しむには、なにか特殊な方法が必要な気がする。