佐々木丸美「崖の館」



財産家の伯母のもとに冬休みを過ごしに集まる子供達は、そこで2年前に起きた謎の死亡事件を解明すべくそれぞれ動き出すのだが、そのさなかに相次いで不思議な事故や事件が起こり、それぞれが疑心暗鬼になりながら共同生活を継続する。

なんだかとてもものすごい小説を読んでしまった気がする。とにかく最初から何か曰く言い難い雰囲気が漂い、読んでいる間に気持ちが悪くなり途中で読むことを断念したのだが、せっかくだから最後まで読もうと再び手に取り最後まで読んで、結局とても気分が悪くなった。そもそもここに集まる子供達の気が知れない。それぞれなにか嫌だなあと思ってくるのであれば来なければよいのに、それでも集まるのはおそらく結局は伯母の財産目当てなのである。そこで起こる事件の顛末も、思いこみとすれ違いによる愛憎の産物であり、そこまで憎悪を高める必要も亡いのではないのかと、読者ながらに理不尽な気持ちでいっぱいだ。登場人物はそれぞれ異常な思いをどんどん募らせて行くわけだが、それが全く納得しがたい。また、登場人物の独白も明らかにこちらの世界を一歩踏み出してしまっていて不気味である。このような物語を構築したいと思った著者の意図が、想像するだに恐ろしい。とにかく非常な衝撃を受けたという点で、非常な力強さを持った作品であることは確かだが、そのベクトルは極めてネガティブで、気持ちの良いものではない。ああ恐ろしい。