山田正紀「女囮捜査官5 味覚」

女囮捜査官 (5) (幻冬舎文庫)

女囮捜査官 (5) (幻冬舎文庫)

女性囮捜査官の主人公は新宿で張り込みをしていたところ、ターゲットの女性が現れバスに乗り込んで行く。その後を追いかけた上司はバスの中で死体で発見され、さらに同僚はターゲットの女性の立ち寄ったATMでこれまた死体で発見される。この2つの異常な状況を発端として、主人公の所属する組織は解体の危機に瀕することとなる。

「女囮捜査官」シリーズの最終巻。物語の最後にふさわしく物語はある種華やかな暴走を続け、最後は狂騒的でわけのわからないとても素敵なクライマックスを迎えることとなる。基本的には日本の中枢にも関わる某組織とそれに関わる人々の抗争を描いた本作は、しかし異常なまでの山田氏のサービス精神によってあらぬ方向へ次々と脱線し、物語は中盤から後半へと移りゆく中でほぼ完全に崩壊したかと思わせる。しかし、ここからが山田氏の物凄いところで、どう考えても通ることのない筋は見事な「名推理」によって次々と論理づけられて行き、また登場人物達の不可解な行動も見事に説明が付けられる。その説明は決して納得ができないのだが、主人公までが常軌を逸した行動を取り始めるに及び、そのような疑問は全く忘れ去られ、終盤はただただ物語の力強さに押し流されるだけであった。最後のアクションシーンに至っては、いったい今まで何を読んでいたのかよく分からなくなってしまったが、もうそれでもよし!決して上品でもなく(というかむしろ猥雑で)回収し切れていない伏線もいっぱいありそうだが、とにかく力強く、勢いの良い作品でした。