はやみねかおる「亡霊は夜歩く」

三つ子の中学生の女の子の一人が、学園祭の直前とその当日に起こった不可解な出来事に巻き込まれ、隣の名探偵とを自称する食い意地の張った元教授に解決を依頼する話。

確かに子ども向けの柔らかいお話なのだが、相変わらずはやみね氏の小説に対する愛の溢れたとても良い作品でした。物語は単純明快でわかりやすく、伏線は堂々と張られて見落とすことが難しい。そのため物語の主要な犯人はあっさりと分かってしまい、意外性のかけらもない。でも、ものわかりが良く、勧善懲悪になりがちな本当にこども向けの作品とはやみね氏の作品の違いは、氏が教師であったこと、そしてこどもたちに読んでほしいと思って作品が書かれたことによるのではないか。それは、なにか切ない割り切れ無さと、全てを説明せず読者に想像と思考の余地を残した、ある意味教育的であり、ある意味推理小説としては型外れな作品となって立ち現れる。と言うわけで本作も前作に引き続きとても楽しむことができました。これを小学校で読むことができた人たちは幸せだなあ。