森福都「狐弟子」
- 作者: 森福都
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2005/11/16
- メディア: 単行本
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狐を自称するが全くのイカサマで、難題を解いてくれと言われるたびにどうしようかと思い悩むが適当にやり過ごす和尚が出てくる表題作が一番楽しめた。文章は乾いていてリズムが良いが、物語自体はなんだか生臭く、そのバランスが気持ち良い。また、幽霊憑きの姉妹と医師の少年の話も、幻視された時間の中で揺れ動く少年の歴史の描写がなんとも切なく楽しめた。このようなある種の無常観は「碧眼視鬼」の中でも打ち出されるのだが、こちらはもう少し騒がしい雰囲気で滑稽な雰囲気があり、それもまたよし。全体的には肉欲と愛欲にまつわる物語が多く、ちょっと脂っこいような気もしたが、その淡々とした筆致は物語を生臭くしすぎることなく、非常に流れよく美しい文章で語り上げている。このような中国中世に材を採った物語が好きであることは最近自覚したのだが、それを差し引いても良い小説だと感じたのです。