ジョージ・R・R・マーティン「王狼たちの戦旗 上 氷と炎の歌2」

王狼たちの戦旗 (上)  (氷と炎の歌 2)

王狼たちの戦旗 (上) (氷と炎の歌 2)

中世イギリスをモデルとした架空の国での一大大河ドラマ第2部。本巻では国土の北や南など各地で王を名乗るものたちが入り乱れる、大変にドラマティックな展開を見せる。しかし物語はじりじりとしか進まず、ロブは中部に駐留し、ジョンは北の僻地をさまよい、アリアは帰り着かず、ブランは相変わらず鬱屈する。しかしティリオンのみはキングズランディングの政治的権力を握り始めることに成功する。

相変わらず多数の視点から語られる物語は圧巻の一言であり、巻措くにあたわずの言葉がふさわしい一冊で、実際読みはじめたらとても止めることができず、観念して最後まで読みすすると午前3時だったが、このような充実と感動に満ちた読書をすることができるのも年に何回あるのか分からないなあと、非常に感慨深く思ったものです。第1部「七王国の玉座」は2月に1冊程度の間隔で出版された文庫を、次はいつかと思いながら読んでいたのだが、5冊で完結した後第2部の文庫版出版の気配が無く、かと思うと書店には第3部が並び始め、これはもう待つことができないと観念して単行本を読んだ。しかし、見事な物語である。細切れにされたそれぞれの物語は、その一つ一つがいちいちその先が気になる何らかの要素を持ち、それが次々に襲ってくるのだからたまらない。しかも勢いよく読み終わって気づくと、あんまりそれぞれの状況には変わるところがなく、相変わらず皆あまり簡単には収まりのつかない人生を悩みながら生きている。これがまた、物語に厚さと陰影を与えていて読み応えがある。しかし、このままだとみんなあんまり幸せになりそうもないのだが、一体大丈夫なのだろうか。そしていまだ海の彼方をうろうろしているドラゴンの家系の末裔は、いったいいつになったら主戦場に参加するのだろうか。さっさと下巻を読むしかないか。しかし気になるなあ。。