ジャック・リッチー「クライム・マシン」

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

犯罪にまつわる小咄集。タイムマシンをネタにした表題作を始め、ルーレット必勝法に関わる犯罪、ふとしたことで人びとを殺し続けるようになった男の話など、17編収録。

最近(といってもちょっと前だけど)書店でこの作者の最新刊が並んでいるのが気になった。ネットで見てみると、ほとんどの人が「前作クライム・マシンには劣るものの、それでも素晴らしい」と絶賛している。それならば前作を読んでみようと思って購入。最初の数編は文章のノリが合わず、これのどこが面白いのかと自分の思考能力を疑った。しかしだんだんと文章の雰囲気が豊かになって行く感じもして、中盤までにはすっかり楽しめる雰囲気となった。でも、それほどまでには牽引力を感じず、1ヶ月ほど机の上で寝ていたのだが、最近読む本が無くなりそういえば読み終わっていなかったことに気づき再度読みはじめ、巻末にまとめられた「カーデュラ」シリーズは面白くないなあと思いながら読み終わった。とはいっても、全般的に非常に手際の良い、切れ味のある作品集でした。短編ならではの語りと構成の妙、スピード感、着想の奇抜さは確かに絶賛されるだけの事はある。しかし、前半の数編に感じられた、なにかマッチョな語り口は数編読むだけで胸焼けがする。また、解説では「軽さ」と「無駄をそぎ落とした」文章について高く評価されているが、作品によってはそのどちらも感じられないのは翻訳のせいなのだろうか。特に短編となると、物語の構成よりはむしろ文章の切れ味に、作品が与える印象はかかってくると思うのだが、そのあたりのバランスというか、訳者のねらい所が多少ちぐはぐな感じが読み終わって感じられた。ちょっと重々しすぎるのではないかな。軽さと無駄の無さといえば、やはり天城一氏のような文章を思い出すのだが、それとはちょっと路線が違うんだよなあ。しかし、そんなに絶賛するほどの作品かな。。