ジャック・カーリー「デス・コレクターズ」

デス・コレクターズ (文春文庫)

デス・コレクターズ (文春文庫)

街はずれのモーテルで一度埋葬され掘り起こされたと見られる女性の死体が発見され、さらにその死体にはローソクで異常な装飾が施されていた。その死体が発端となり、30年前に一人の狂気に犯されたカリスマティックな連続殺人犯に関わる関係者が殺され始め、悩ましい秘密を抱える精神病理・社会病理捜査班に所属する若い刑事が相棒と奮闘する話。

前作「百番目の男」は傑作だったが、本作も期待を裏切らない非常に質の高い作品。相変わらずサイコキラーとそれを取り巻く人々のお話だが、緻密に構築された構成、切れの良い展開、小気味よい会話文、そしてある種の「名探偵」的主人公の推理と飛躍がことごとくツボに入りとても気持ちがよい。何となく感じられるのは、主人公がパリに赴きアルツハイマー症とおぼしき男性と空想のチェスを戦わせる場面に現れているように、非常に描写が映画的というか、映画的な雰囲気を思い起こさせる筆致である。しかしだからといって展開がハリウッド的であるとか、予定調和的なわかりやすさに満ちているかというとそうではなく、むしろ言葉の一つ一つを極めて丁寧に配置してあるためか、注意深く読み進まないと伏線やエピソードを読み落としてしまう気もして安心出来ない。とにかく、非常に細かく、丁寧に構築されているため、読み応えは大きくとても楽しめた。この密度で次回作も書いてくれるといいなあ。