デニス・ルヘイン「シャッター・アイランド」

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

とある孤島では精神を病んだ犯罪者が集められ治療されている病院があるのだが、そこから患者が逃げ出したとの連絡を受け連邦保安官が調査に乗り出す。しかし、非協力的な病院、迫り来るハリケーン、不可解なメッセージなど、保安官の周囲には不思議な出来事が相次ぎ、物語はなんだかよくわからなくなる。


帯には「驚天動地!賛否両論?」とあるが、いわゆる「新本格」ミステリでは使い古された手法で、途中まで読んで大体あたりがついた。物語自体はゴシック的というかホラー的で、硬質な文章が極めてきれいに訳されていて良いのではないでしょうか。しかしなんだかそれ以上の事は思いつかない。確かに物語の全体的な仕掛けはあるのだが、計算し尽くされて書かれているので意外と意外感が無い。上手く収まっているので安心感がするくらい。破綻しているところもなく(ある種のいいわけが成立するため)、当然驚きもない。そんななか一番気になったのは著者の写真で、シリアルキラーの写真のような邪悪さが見えるような気がして面白い。帯によるとカバー裏の内容紹介文には暗号が仕掛けられているとのことだが、全く分からない。でもどうでもいいけど。