マイクル・Z・リューイン「探偵学入門」

探偵学入門 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

探偵学入門 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

やたらぶ厚い探偵小説短編集。ポケットミステリというわりにはポケットに入らないよ。

短編集はあまり得意とするところではなく、多少身構えながら読んだのではありますが、まあ、さすがのリューインで読み応えはあり、とても楽しめました。特に、陪審員を主人公にした「偶然が重なる時」の、全体の構成を最後まで読み手に分からせることなく物語を語る手法や、詐欺師のお話「旅行者」など、まあこの人は上手いなあと感じざるを得ない話もいくつかあり、なかなか質が高い。一方で、短編と言うより超短編というべき数ページの作品もあり、それはむしろ発想だけの勝負というか、なんだか手慰みで埋め草に書いたみたいな感じもして、同人誌でも読んでいるかのような気分になったことも確か。また、あんまり相性が良くない「探偵家族」のシチュエーションでかかれた短編がいくつか収録されていることで、これはあまり楽しめなかった。やっぱり、短編集って読んでいて疲れてしまうと言うか、落ち着かないんだよなあ。特に、「探偵家族」のような視点が素早く切り替わるただでさえ落ち着かない構成をとる設定では、疲れてしまって理解することも難しい。まあ、全体的な質はとても高いのだとは思うのですが。実在したアメリカ副大統領を強烈に皮肉った作品などもあり、楽しめたことは楽しめました。