日本推理作家協会編「トリック・ミュージアム」

これは年鑑のようなものなのか?よくわからないが、とにかく10名の作家の短編を集めたもの。以下、だらだらと感想。篠田節子「リトル・マーメイド」別に推理小説でも無い。トリックも無い。小説としては緊張感が感じられない。多分に気持ち悪い。横山秀夫「沈黙のアリバイ」これもどこがトリック?という感じだが文章が秀逸。完成度が高い。職人的。光原百合「十八の夏」文章が気持ち悪く読めなかった。乙一「神の言葉」相変わらずの切れの良さ。悪趣味ながら遊びが感じられ、才能の輝きを感じる。片岡義男「ザプルーダの向かい側」探偵小説でもないしなんだかよく分からないが、硬くて冷たい不思議な雰囲気が楽しかった。文章に切れがある。首藤瓜於「物証」あー、これは面白い。結構よくあるタイプの人情物語だが、僕はこういうの好き。古処誠二「九十五年の衝動」相変わらずの自衛隊小説。それだけでも面白いが、物語の輪郭のつかめ無さも面白い。山之内正文「エンドコール メッセージ」悪趣味な復讐譚。こんな文章を書く人だったか。森福都「十八面の骰子」雰囲気、物語ともに面白かった。連作とのことで文庫で全部読んでみたが、とても良かった。北川歩実「僕はモモイロインコ」タイトルにも滲み出ているとおり気色悪いお話。会話文が不自然。面白くないわけではないが微妙。という感じで、全体としては楽しめた。全然知らない作家を発掘出来るという意味では、こういうアンソロジーって馬鹿にしたものでも無いなあ。一方で、こういう形で(気分的には)無理矢理読んでしまった作品が趣味に合わなかった場合、その作家と作品に対する評価が著しく低下してしまうことも確か。なかなか難しい。