田中啓文「ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺2」

ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))

ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉 (笑酔亭梅寿謎解噺 (2))

高校の先生に無理矢理噺家に弟子入りさせられたモヒカンの不良少年はなぜか落語と探偵の才があり、次々と身辺に起こる不思議な出来事の筋道を解き明かしてゆく短編集。

とはいいながら、あんまり謎も存在しないし探偵もしない。それぞれのお話で落語を下敷きにしているせいか、なんだか落語界を題材に取ったぱっとしない人情青春落語家成長話を読んでいる感じ。若手落語ファンにはたまらない小説なのではないでしょーか。まあ、全体的なまとまりも良く、悪人は悪人らしく、善人は善人らしく、はなしのそこここにミステリー的な楽しみもちりばめられ、読みやすく楽しい一冊に仕上がっていると思います。でも、それだけと言えばそれだけで、落語のネタもだんだん苦しくなり、別に落語でなくても尺八や浄瑠璃の世界でも良かったのでは無いかな。人物も戯画的にすぎるというか、あまりにも典型的にすぎ、大げさな大阪弁も鼻につくが、テレビ関係の人々のあり方もあまりに大げさ、面白くはない。おはなし全体もすったもんだの上一応の決着がつくのだが、よかったよかったと演出される雰囲気にはあまり乗り切ることができず、はたしてこれは本当に良い話なのかどうなのか、首をひねる必要も無いなあとは思うのだがつい考えてしまう。それほど考えるまでもない、薄くて軽いお話だとは思うのですが。